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瞬く間に3度ダービーを制したオーナー

 そのレコードを大幅に更新するキングカメハメハをはじめ、ディープインパクト、マカヒキと瞬く間に3度ダービーを制したのが金子真人だ。金子が社員5人ではじめた会社は、バブル崩壊の影響を乗り越え、94年になって東証一部に上場するあたり、堅実さがうかがえる。週刊文春06年1月5-12日号によると、そんな金子が競馬に手を出すのは、知り合いの社長に持ち馬を買ってほしいと頼まれたことによる。しかし、競馬のけの字も知らない金子は、競馬に通じた知人にこう相談するのであった。

「お金の遣い方教えてくんない?」。カネ持ちにしか言えない言葉である。

2016年、第83回日本ダービー優勝馬マカヒキを前に、左から騎手の川田将雅、金子真人オーナー、友道康夫調教師 ©杉山拓也/文藝春秋

 それに対して知人は、くだんの社長に持ちかけられた話は勧めずに、かの吉田勝己と引き合わせる。「事業に成功し、財をなした人が馬に手を出す例は少なくない。だが、たいてい失敗する。さんざん散財して、たどり着くのが社台、ノーザンファーム」との知見からだ。かくして金子は、いきなり知り合った吉田が代表を務めるノーザンファームの生産馬で大舞台を3度、勝つ。

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 現れては消えていく馬主の世界にあって、うまいカネの遣い方を教えられたようだ。

昭和最後のツービート、平成最後のキタノコマンドール

 ダービーを勝たずとも、競走馬を持つこと自体が社会的なステイタスである。高額で買った馬の名付け親を譲ったり、馬名にひとの名前を入れたりするのは、そんな身分でこそのお大尽だろう。前者は最近ではこじはると白石麻衣を名付け親にした例が有名か。後者は、公営だがアケミボタンにアケミダリア、アケミタンポポと外務省職員が公金を横領したカネで馬を買い、愛人の名前をつけたのが思い起こされる。スナックを持たせるよりもゴージャス感のあるプレゼントだ。実のところは横領したカネなので、みみっちい話だが。

 さて今回の日本ダービーには、今をときめく亀山敬司率いるDMMの馬が出走する。ビートたけしが名付け親のキタノコマンドールだ。昭和最後のダービーにガクエンツービートなる馬が出走し、9着となったが、平成最後のダービーでキタノコマンドールはいかに?

1998年、日本ダービーを制したスペシャルウィーク。鞍上は武豊 ©共同通信社

(注1) 藤田晋「馬とフェラーリ」2004年10月26日「渋谷ではたらく社長のアメブロ」
(注2) 『週刊100名馬vol.7 アイネスフウジン』小野塚燿「涙の向こうに見えたもの」