ウクライナ政府によれば、北朝鮮軍兵士約1万1000人が、ウクライナ軍が越境攻撃を続けるロシア南西部クルスク州に配置された。ウクライナのゼレンスキー大統領は11日、同州で、約5万人の敵と交戦中だと明らかにした。

 5万人のなかには、ロシア軍のほか、北朝鮮兵も含まれているとみられ、軍事専門家たちは今後、北朝鮮兵に多数の死傷者が出ると予測している。

プーチン大統領と握手する北朝鮮の崔善姫外相 ©時事通信社

北朝鮮兵は「弾よけ」

 韓国の市民団体「自主国防ネットワーク」の李逸雨(イ・イルウ)事務局長によれば、ウクライナ軍の陣地に近い4つのロシア軍部隊に、それぞれ1個大隊規模の北朝鮮兵が投入されている模様だ。編成をみると、北朝鮮兵30人に対し、ロシア軍から将校3人、通訳1人、補給担当1人、重火器担当1人の計6人が対応している。

ADVERTISEMENT

 北朝鮮兵には突撃銃や対戦車ロケットランチャーなどが支給されているが、戦車や装甲車などは与えられていない。李氏は「編成を見る限り、北朝鮮兵はウクライナ軍の弾薬を消耗させる『弾よけ』として最前線に投入されているとみるべきだ」と語る。

 クルスク州に配備されたロシア兵は、ウクライナ軍のドローン(無人機)に苦しめられてきた。ロシア兵がウクライナ陣地まで10キロ圏内に入ると、ドローンが手榴弾を雨あられと降らせてくる。クルスク州には、ウクライナ・ブチャで虐殺行為を働いたロシアの部隊も投入されているため、復讐に燃えるウクライナ軍の士気は高いという。

金正恩氏の周囲を固めるボディガード ©AFP PHOTO/KCNA VIA KNS

北朝鮮兵士を襲うドローン

 ロシア軍は、ドローンへの指示電波を妨害する「ドローン・ジャマ―」を使っているものの、装備の問題から十分な効果を挙げていないようだ。また、ウクライナ軍は指示電波が切れた場合に周辺の敵と識別できた目標に自爆攻撃を行うようプログラムしたAI(人工知能)を備えたドローンも使っている。

 ウクライナ軍のドローンはカメラのほか、赤外線センサーも備えている。兵士が隠れても、体温によって検知されて攻撃を受けるという。ロシア軍に比べ、北朝鮮軍はドローンとの戦いを経験していない。「弾よけ」として使われる状況も重なり、更に死傷者が増えそうだ。

 韓国政府によれば、ロシアに派遣された北朝鮮兵には特殊作戦軍の兵士もいるという。朝鮮中央通信が10月4日、特殊作戦部隊の基地で行われた訓練として配信した写真を見ると、どの兵士も筋骨隆々の体格だった。10月2日に訓練を視察した金正恩総書記も「一騎当千の万能戦士に育った誇らしい軍人」と語ったほどだ。