派遣された北朝鮮兵の特徴
そうした「労働兵」と比べて、ロシアに派遣された北朝鮮兵は士気も練度も高く、「最低限の戦闘能力を備えている」(李逸雨氏)という。主に、南北軍事境界線沿いに配置されていた部隊で、「出身成分」(北朝鮮独特の身分制度)も悪くなく、忠誠心も高い。こうした兵士には、より頻繁に政治学習を課すと同時に、比較的良い待遇が保証されている。筋骨隆々の兵士たちも食事環境も悪いものではなかっただろう。
北朝鮮を逃れた元朝鮮労働党幹部によれば、パルチザンの家系など高級幹部たちは、そもそも子どもたちを軍隊に送らない。無条件で大学に進学させる力を持っているからだ。まれに、「範を垂れる」という意味で、高位層の子弟が2年ほど軍隊に送られることもあるが、事故などに遭わないよう、事務職などをあてがわれることが多いという。
ワイロで「なるべく楽な部隊に」
次に、党や政府などに勤務する中級幹部の場合、人脈と賄賂を使うことで「なるべく楽な部隊」に子供を送るように努力する。それは、食料もある程度保証されている南北軍事境界線近くなど、戦闘能力を持つ部隊を意味する。
当局としても、中級幹部の場合は国家への忠誠心という点で問題がないため、安心してこうした部隊に配属する。いわば、今回、クルスク州に送られた兵士たちは、こうした中級幹部の子どもである可能性が高い。
日ごろ、比較的恵まれた待遇があだとなり、クルスク州の戦場に送られることになったとも言える。まさに、「人生万事塞翁が馬」。金正恩体制を維持するための人柱にされた北朝鮮兵士たちの運命に同情を禁じ得ない。
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