シリーズ累計80万部を突破している「紅雲町珈琲屋こよみ」シリーズ。このほど発売された『時間(とき)の虹』は、第12弾にしてなんと「結び」の一作となりました。
2004年、「紅雲町のお草」でオール讀物推理小説新人賞を受賞し、20年の時間をお草さんと共に走り続けた著者の吉永南央さんに、「結び」を迎えるまでの道のりと心境を伺いました。
全2回の前編です。(後編はこちら)
★紅雲町珈琲屋こよみシリーズとは
北関東の、観音様が見下ろす街・紅雲町(こううんちょう)。ここで、気丈なおばあさん、杉浦草はコーヒー豆と和食器の店「小蔵屋」を営んでいる。日課の朝の散歩で出くわすちょっとした出来事や、お店の試飲のコーヒーを目当てに訪れる常連客たちとの会話をきっかけに、お草さんは街で起きた小さな事件の存在に気づくのだが……。
甘いだけじゃない、ちょっぴりビターな「日常の謎」系ミステリ。
詳しくはこちらから。
https://books.bunshun.jp/sp/osou
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――最新作『時間の虹』は、静かな時間が流れる、いつもの小蔵屋から物語が始まります。穏やかに見えて、実はいろいろな事件が進行している……一番驚いたのは、前作『雨だれの標本』でやっとプロポーズにこぎつけた山男・一ノ瀬と、小蔵屋唯一の正規従業員・久実に不穏な空気が漂っていることです。
吉永 衝撃を与えてしまったそうで、すみません(笑)。しかも、帯には「小蔵屋、まさかの閉店。」ですしね。何事かと思われるのではないでしょうか。
――あらためてシリーズを見返すと、7作目『黄色い実』から登場した一ノ瀬という人物だったり、8作目『初夏の訪問者』に出てきたある団体が絡んで来たり、と、シリーズ後半に出てくるトピックが、この『時間の虹』で解決を見せていきますね。
吉永 そうなんです。未読の方には、1作目の『萩を揺らす雨』はお草の登場なので読んでいただきたいとして、次は『黄色い実』から久実と一ノ瀬の関係を追っていくというのはおすすめの読み方です。私もまさか、こんなに一ノ瀬との関係を書くことになるとは思いもしませんでした(笑)。