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ステルス性を保つための、独特なシルエット

 しかし今回はそんな前回までの「かが」とはがらっと雰囲気が違っていた。イタリア海軍の空母「カブール」よりも長い全長248mの飛行甲板を仕切るのは、これまでと同じフル装備の「かが」の乗員たちであったが、それに加え赤や黄色という色とりどりのフライトベストを着こんだ米海兵隊員や米海軍軍人らも走り回っているのである。そしてなにより際立つのは飛行甲板後部に控える固定翼戦闘機F-35Bの存在である。

 米海兵隊所属を示す「MARINE」のエンブレムにかわってその垂直尾翼には「かが」艦載機を示す日本語で描かれた「かが」のエンブレムがあった。その独特のシルエットはステルス性を保つため爆弾倉も機体内部に収納され、アンテナも機銃すら見当たらない。ツルンとした機体外殻から塗料までいまだ我々のカメラから遠ざけられており、自らはレーダーに映らないのにコックピットからは機体全方向に張り巡らされたカメラの映像がパイロットのヘルメット内のヘッドアップディスプレイに映りだされるという死角なしというのである。そして我々自身も機体の6m以内に近づけないほど、そのステルス性は国防秘なのである。

©宮嶋茂樹

「かが」乗員の表情もみな誇りに満ち溢れているように見える。

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 それが戦後初の空母乗組員となった誇りなのか、自衛艦のなかで最初の固定翼戦闘機の艦上運用試験飛行に成功した喜びも加わってなのか、「かが」艦上はお祝いムードが漂っていた。

©宮嶋茂樹

映画「トップガン」の冒頭シーンのよう

 米側指揮官ウエイド海軍中将とともに記者会見に応じた日本側指揮官、海上自衛隊護衛艦隊司令官伍賀祥裕海将も冷静に答えたとおり、そもそも「かが」や「いずも」型の全通飛行甲板を持つ護衛艦は対潜水艦戦闘に特化し、複数のヘリを同時に運用するという災害派遣等も含めマルチロール(多目的)機能を持つ護衛艦やったのが、昨今の日本周辺海域の状況変化に伴い、新たに固定翼戦闘機の海上運用の機能を持たざるをえないようになっただけなのである。

 この日、我々の目の前で繰り広げられたのは映画「トップガン」の冒頭シーンを彷彿とさせるような出来事ばかりであった。「かが」右舷の第2エレベータ―にまるで最初からあつらえたようにF-35Bが載せられ、飛行甲板と広大な格納庫を昇降でき、その機能はF-35Bだけでこの日は2機だけとはいえ、搭載機は推定8機から10機が運用できるというのである。