9カ月前のよりによって元日に、能登はM7.6の地震とその直後の大津波に襲われた。その後は遅々として進まぬ復旧復興にいらいらしながらも、やっとこさ仮設住宅に入居できたお年寄りや、再開された中学校に通い始めたばかりの女子中学生が留守番を務めていた家屋に、今度は豪雨とそのあとの山津波が襲い掛かったのである。そして豪雨から2週間以上たっても、警察、消防、自衛隊による行方不明者の捜索が続いているのである。

©宮嶋茂樹

再び泥に呑まれてしもうた

 やっと震災からの復興の一歩を踏み出し、当地で商いを再開したばかりの商店や飲食店も仕入れた商品や材料ごと再び泥に呑まれてしもうたのである。たった2カ月前にはかすかな希望に胸をふくらませていた住民をこの目で見たばかりやのに……現地の住民のその絶望感たるや察するにあまりある。そしてその前でカメラを構えるしかできぬ写真家は無力感に苛まされるばかりである。

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地震より性質が悪いと言う住民も多い

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 豪雨が能登に残した爪痕はあまりにも深い。9カ月前の地震より性質が悪いと言う住民も多い。山間の集落に通じる道は再び土砂が押し流し、ことごとく崩落、その現場では口に泥を詰め込まれたようなむせかえるような土のにおいが鼻をつく。やっと晴れたと思うたら、乾いた土や立ち上がる土煙が視界をさえぎるしまつである。そんななか泥にまみれながら、もはや使い物にならぬ家財を運び出す光景は9カ月前に見たばかりやないか。

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