中国人は細部のこだわりよりも分量で勝負する
大王いわく、中国の性文化事情における服装フェチはあまり大したことがないという(性的な要素を前面に出さないオタク向けのコス文化は中国で大流行中だが)。
だが、この手の服装フェチの根幹をなす「触れられないものに触れたい」という感情自体は、本来は洋の東西を問わないものであるはずだろう。日本人男性の制服フェチも、学生時代に近寄れなかったクラスのかわいい子のイメージが投影されているからではないか。
さらに言えば、触れてはいけない対象が自分よりも「高位のモノ」「自分を抑圧するモノ」になると、フェチに一翻(イーハン)が付く。日本の成人向け動画で女性教師モノや女性上司モノが多いのも、おそらくこうした理由である。中国には、そういうのはないのか?
安田「中国の場合、僕が真っ先に思いつく『抑圧者』って、たとえば公安とか軍隊です。女性のそういう格好が好きな男性っていないんですか?」
大王「あまりいないですね。セクシーな感じが全然ないじゃないですか。そういうことを考えるのって日本人だけですよ」
安田「うーん。でも、例えば中国の空港って、保安検査場の武装警察隊員の女の子が妙にかわいいですよね。彼女らに全身をパタパタされていると、私は軽く幸せな気分になるわけですが、中国人の男性に『武警女子隊員萌え』の方はいないんでしょうか?」
大王「うーん。一般的な中国人の性的な嗜好って、もっと単純で即物的なんですよ。なによりも大事なのは『刺激があるか』『身体的に気持ちいいか』。それ以上に複雑なことはあまり考えない人が多いと思います」
安田「刺激とはどういうことでしょうか?」
大王「例えば、性風俗店なんかでは『双飛』(顧客の男性1人にお姉さんが2人付く形式)が普通にコースに入っていることが多いし、お金があるならそれ以上大勢の女性を呼ぶ人も少なくない。あと、実は集団でそういう行為をおこなう愛好者のサークルみたいなものも、意外と多く存在しているみたいですよ」
安田「別の方向に振り切ってますね。とにかく分量で勝負みたいな感じですか」
大王「そうですね。あと、僕が見る限り日本人は“個人にハマる”けれど、中国人はとにかく“数”をこなす。例えばナイトクラブでも、上海にいる日本人男性駐在員は一人の女の子に熱を上げる例が多い。お店に何回来ても、必ず同じ子を指名するんです。いっぽうで中国人の場合、毎回違う女の子をダーッと大量に呼んで盛り上がる感じなんですよ」
「引き算」の日本料理、「足し算」の中華料理
一般論として、日本料理は「引き算」の料理であり、少ない素材にあれこれ手をかけて素材の旨味を引き出すとされる。いっぽう中華料理は「足し算」であって、とにかくいろんな材料や調味料をぶちこんで量で勝負する。もしかすると性的な分野においても、やはり同様の傾向が見られるということかもしれない。
もっとも、最近は中国でも日本料理や日本文化が人気であり、いわゆる「引き算」的な、対象の細部のリアリティやコンテクストにこだわる考え方は徐々に市民権を得ている。彼女に人民解放軍の軍服を着せて尋問するのが好きとか、紅衛兵の格好で赤い表紙の官能小説を朗読させるのが趣味とか、そういう突き抜けたアブノーマルな人だって、広大な中国のどこかには存在するのではないか。
私はやはり、そんな人を探してみたいと思っている。
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