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「すべてにおいて洗脳されていた」

 その裁判にはaikoも今年6月に検察側の証人として出廷し、被告である元プロデューサーから「すべてにおいて洗脳されていた」と証言したことが大きく報じられた。彼女の言う「洗脳」とは、「君はインディーズでずっと音楽をやる人間だけど、僕がメジャーに引き上げちゃったんだよね」と言われたりして、元プロデューサーがいないとダメなんだと思わされていたことを指した。

 だが、法廷で彼女は、「音楽を続けることが目標であり夢だった。被告(実際の発言では実名)がいなくなって、前にも増して音楽が楽しいです」とも述べている(以上、裁判での発言は「朝日新聞デジタル」2024年9月4日配信より引用)。実際、そのとおりなのだろう。2021年のアルバム『どうしたって伝えられないから』以降、自身で作品をプロデュースするようになってからというもの、シングル(配信限定を含む)のリリースのペースが速まっているのはその何よりの証しといえる。

『残心残暑』(ポニーキャニオン)

 今年8月には16枚目となるアルバム『残心残暑』をリリースしたが、そのボーカル録りをほぼ終えた翌日に応えた取材では、《実はまた、新しい曲を作り始めました(笑)》と言うのでインタビュアーを驚かせた(『音楽と人』2024年9月号)。2020年に結婚したが(公表したのは翌年)、曲は夫が寝ているあいだにつくっていることもあり、生活は以前とさほど変わっていないという。それにしても、あいかわらず旺盛な曲づくりへの意欲には感嘆させられる。

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きっと、ずっと、満足することはない

 そんなaikoは10年後、20年後と、将来的に何を目標としているのだろうか。昨年、これについて問われた彼女は次のように答えている。

aikoのXより

《歌手になりたいですね(笑)。自分の思い描くこんなふうに歌いたいっていうところまではたどり着けてないんです。ライブをするとかテレビに出るっていう子供の頃の夢は叶ったけど、それをつづけるためにはもっと頑張らなきゃ。だからどんなときも『もっと』です。きっと、ずっと、満足することはないんでしょうね》(『anan』2023年3月22日号)

 すでに四半世紀以上ものキャリアを持ちながら、この志の高さ。「あたしはあなたにはなれない」とは彼女が今年リリースしたシングル「相思相愛」のフレーズだが、いまなお曲づくりを日々欠かさず続けているのを見ると、誰もaikoのようにはなれないと思わせる。