実父による性的虐待を長年受け続け、50歳を超えた今も重度のPTSDに苦しむ女性がいる。塚原たえさんは、果敢にも実父がした卑劣な行為を実名で、しかも顔を出して告発した。なぜ彼女は実名・顔出し告発を選んだのか――。
逃げても逃げても追いかけてくる「父は悪魔ではなく、鬼畜」
「近親相姦」。それは、父と娘、母と息子、兄と妹、姉と弟などといったごくごく近しい関係性での性行為であり、相手が合意していない場合はもちろん犯罪である。
しかも多くの加害者は、被害者である娘、息子、妹などが幼くて「その行為が何なのか?」を認識できず、体力的に抵抗できない年齢の時期を狙う。卑劣極まる行為だ。
そして、そのような子どもへの性加害が年々増えている。
厚生労働省の「令和4年度 児童相談所での児童虐待相談対応件数(速報値)」によると、2010年度には1405件だった性的虐待の相談件数が、2022年度には2451件まで増加。
しかしこれは氷山の一角にすぎないだろう。
先述のとおり、被害を受けている子どもが、何がわが身に起こっているのかを把握できていない、加害者から「誰にも言うな」と口止めされた、そして被害として認識し始めたとしても誰にも相談できないケースが多々あるからだ。
なお、加害者になるのは血のつながりのない継父や養父かと思いきや、全体件数の中で実父が40%にものぼり、実母が4%ほどいる。
それでも、以前は家庭内で揉み消された性虐待について、被害を受けた子どもが勇気を出して告発するケースがほんの少しずつ増えている。
初潮が来た日にケーキで祝い、そのまま娘をレイプした父
塚原たえさん(52歳、以下たえさん)も、実父から壮絶な性虐待を受け、実名で告発に踏み切った一人だ。彼女は親の愛情をしっかりと受けるべき幼い時期から、ありとあらゆる虐待を受けて育った。
長距離トラックの運転手だった父は、帰宅すると、たえさんと息子(たえさんの弟)に殴る・蹴るだけでなく、風呂の水の中に沈める、頭に尿をかける、裸にして外に放置するといった狂気の虐待を行った。