そしてここで映画の原作小説を翻訳した中井はるのが来場。英語を話せる同士、英語でコミュニケーションをとってみせるなど、すっかり意気投合した様子のふたり。そしてここからは、外見はヘレン・ミレン、そして中身はキンタロー。として(時折ヘレン・ミレンが顔を出す時もありつつも)本作のトークをおこなうこととなった。まずは映画の感想について「何の先入観もなく映画を観させていただいたんですが、こんなに泣くとは思わなかった。最後は目がパンパンになってしまって考えさせられましたね。人間が窮地に陥った時にどう振る舞うか。わたしも自分の身を振り返ってみて、自分にもできるだろうかと思いましたし、ちょっとだけラブストーリーも入っていましたし、大満足な1本でした」。
翻訳者は、この小説をどのように見つけたのか
一方の中井も「『ホワイトバード』、そしてその前の『ワンダー』というお話があるんですが、それぞれ泣きながら翻訳をしていました。盛り上がるシーンが出てくるたびに『なんで?』と思いながら。ここには命をかけた救出があるんですね。(主人公のジュリアンの)身体は小児マヒで動きにくい少年なんですが、そんな彼がサラを救おうと思って、すごいことをどんどんやっていくんです。それは読んでいても、翻訳していても、本当に胸に詰まるものがあり、本当にこの映画は、最後の最後まで泣かせてくれるなと思いました」。
前作の原作小説「ワンダー」を日本に紹介し、翻訳した中井だが、この小説をどうやって見つけたのだろうか。「もともとニュースにはなっていたんですが、覆面作家だったんです。出版界にいた人ではありましたが、デビュー作が評判になっていて、原作を読んでみると登場人物ごとに章立てされていて、読みやすかった。それと(登場人物)それぞれに立場が違うから、感情移入できるというか。これはぜひとも出版したいと思ったんです」。
本作は、かつていじめっ子だったジュリアンが、祖母のサラが封印してきた戦争中のできごとを聞くことによって、本当のやさしさの意味を知っていく物語となる。そんなやさしさの意味についてキンタロー。は「劇中でも言っていますが、やさしさは勇気。親切も勇気。ただやさしいだけでは駄目で、時には、その人のために注意をすること、叱ることもやさしさだと思うんです。わたしも二児の母として学んだことですが、全部のことをいいよ、いいよと、いい顔をし続けることがやさしさではない。やさしさはいろんなケースがあって。簡単には言い表せないものではありますが、そこには愛があると思います」とかみ締めるように語った。