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―― 映画の感想、評判はいかがでした?

塚本 上映が終わって、学校が原宿にあったものですから表参道でアイスクリームを食べているお友達たちが、自分の方を振り返って「映画面白かったよ」と言ってくれたことが不思議に高揚感のある記憶ですね。『原始さん』の顔は、僕が粘土でお面を作ったんですけど、正面しか作ってないので、横を向けなかった。いつも原始さんは正面を向いてビルを壊してたという映画でしたね。

『原始さん』水木しげる著(「漫画讀本」1969年10月号)

―― 初めて映画を1本仕上げてみて、手ごたえを感じたんですか?

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塚本 とにかくあまりにも腰砕けの映画なので手ごたえとかじゃないんでしたけど、全くやめる気持ちはなくて、その後は火がついたように8ミリ映画を作っていくようになりました。

高校で映画コンテストに入選

―― 高校に入ってからも作り続けるんですね。

塚本 そうですね。次の『巨大ゴキブリ物語』(1975)というのは、ちょっと上映もできないぐらいボロボロの映画なんですけど、その後に作った『翼』(1975)は、シンプルな映画なんですけど、これは当時、日本を記録する映像フェスティバルという大島渚監督がやっていらしたコンテストに入選した。初めて大人の方々とコミュニケーションしたような気分になって、うれしかった記憶が今まざまざとよみがえってきました。

―― 同じフェスティバルで手塚眞さんは『FANTASTIC☆PARTY』(1978)で賞を取って、次の年に僕の『TURN POINT10:40』(1979)も賞を取っています。その少し前なんですね。

塚本 ああ、そうなんですね。ぴあのフェスティバルがまだなかった頃ですね。

―― その時はまだなくてそこしかなかった。『翼』というのはどんな内容だったんですか?

塚本 『翼』というのは、僕も出てるんですけど、空を飛びたいという願望の少年2人が、大好きなヒロインの女の子の前でカッコいいところを見せようと、何度もチャレンジするけど失敗するという映画で。わりと甘酸っぱい、自分としては好きな感じの映画ですね

―― 青春ものですか。