自作の舞台『電柱小僧の冒険』を8ミリで映画化した作品が、ぴあフィルムフェスティバルでグランプリを受賞。その授賞式で塚本晋也監督がスポットライトを浴びたとき、世間に衝撃を与えることになる次回作『鉄男』はすでに完成していた――。日本映画界を担う監督たちの若き日を振り返る好評インタビューシリーズの第7弾。(全4回の3回目/4回目に続く)

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『電柱小僧の冒険』における大林監督の影響

―― 『電柱小僧の冒険』を今回初めて拝見させてもらって、『鉄男』ともはや変わらない技術の高さにビックリしました。

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塚本 そうですね。『鉄男』と『電柱小僧』は大体同じ方法です。8ミリと16ミリの違いだけかもしれないです。

―― PFFで上映された時に、みんなビックリしたんじゃないですかね。あそこまで技術的にできあがった8ミリがあるということに。

塚本 どうなんでしょうね。自分としてはちょっと、本当にアナログな方法のSFXしかできないので。相変わらずのコマ撮りと、ちょっと巻き戻して二重露出ですよね。円谷一さんの本で習ったやつですけど。

©藍河兼一

―― 人間コマ撮りをたくさんやられていましたけれども、大林(宣彦)さんの作品はご覧になっていたんですか?

塚本 大林さんの作品は大学生の時に8ミリ映画とか演劇をやっていた仲間なんかと観て、『HOUSE ハウス』とか「いいな」とか言っていた記憶がありますね。

―― 下駄でスケートのように滑っていくようなコマ撮りを大林さんは8ミリでやっていらして、すごく似ているところがあったので。

塚本 コマ撮り自体は大林さんの影響ではないのですが、『電柱小僧』は紛れもなく大林監督の影響を受けていると思いますね。『時をかける少女』とか。その時強く意識していたかは分からないですけど、後で見ると、ちょっと恥ずかしいぐらい影響を受けているところがあると思います。

―― 『電柱小僧』がPFFで賞を取って評価もされたから、さあ次行くぞ、みたいな感じで『鉄男』を撮るんですか? 

塚本 ぴあは1年かけて募集していたんですね。『電柱小僧』はその最初のほうに出しちゃったものですから、その間1年間かけて『鉄男』はほぼできちゃっていたんです。

―― もう結果が出る前に。

塚本 ええ。それでグランプリをいただくセレモニーの日が、『鉄男』のミックスダウンをやった徹夜明けの日だったんです。それですごく弾みがついたような気持ちがしました。