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CMの仕事をして得た30万でつくり始めた『鉄男』

―― 『電柱小僧』はハードボイルドな部分はあるけど、ハートウォーミングだったりコメディタッチだったりするんですけど、『鉄男』は振り切った方向に行かれましたね。

塚本 10代でも『鉄男』みたいな映画は一個も作ったことがない。どっちかというと『ヒルコ 妖怪ハンター』とか『電柱小僧』が自分のテイストだったんですけど、何か刺激的なことをやる初期衝動みたいなものは『鉄男』に感じましたね。それで実験的な、いつもの自分とちょっと違う、ニューワールドに入るような気持ちで『鉄男』を作った記憶があります。

―― 8ミリに比べてだいぶ制作費もかかったと思いますが、次が勝負だという気持ちで16ミリで作られたんですか?

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塚本 『電柱小僧』はまだ、30万円だか50万円だかのお金があって作り始めたんですけど、『鉄男』の時はお金が残ってなかったんですね。ですので、コマーシャルの仕事を1本やって、そのギャラでスクーピックという僕でも使える16ミリのカメラ、大森一樹監督も『暗くなるまで待てない!』はそれで撮っていたと思うんですけど、その中古のカメラを20万で買って……CMのギャラは30万だったので残る10万で、とりあえず始められるだけのフィルムと、アイランプ3個買って。SFXは燃えないゴミの日にテレビとか拾って解体して、部品を両面テープで田口さんの顔に貼るという方法。当時はフィルム代と現像代が一番かかるので、とにかく撮るだけどんどん撮っていって。早く現像していれば、カメラの中のゴミに気づいたんですけど。

『鉄男』 ©️SHINYA TSUKAMOTO/KAIJYU THEATER

―― 分からずに撮り続けてしまった。

塚本 そう。途中でどうしても困ったら、コマーシャルのナレーションの仕事をやったり、会社の先輩からお金を借りるとかして、撮影の終わりまでは何とかやっていくんですけどね。

―― 膨大な美術の作り物の量で、舞台になっているアパートもグシャグシャになっていましたが、あれはどなたの家なんですか?

塚本 途中でドリルで殺されちゃう女性がいるんですけど、演劇を再開した時のメンバーで、キャストでもありスタッフでもあるんですけど、あの人のお家です。

―― そうなんですか。なるほど。

塚本 そのお家をグチャグチャにしてしまいました。今しゃべっていてもちょっと頭がクラッとしてきますね。

―― (笑)。撮影期間も相当かかったんじゃないですか。

塚本 メインのキャストが絡むところは、なるべく短い期間で撮ろうとはしているんですけど、映画を補足する金属のさまざまなディテールを、その後ずっと、アニメーションを作るかのごとくほぼ1年かけてやってましたね。