1979年11月30日、TBS系のテレビドラマ『3年B組金八先生』の第6回が放送された。同回は、「十五歳の母」というサブタイトルのもと前々週から3回にわたって続いた一連のエピソードの一応の完結編であり、杉田かおる(当時15歳)演じる中学生・浅井雪乃が同級生との子どもを妊娠・出産するという展開は、当時大きな反響を呼んだ。その制作背景とは……。(全3回の2回目/はじめから読む)
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15歳の俳優に性行為のセリフを…脚本家の苦しい心情
『3年B組金八先生』の脚本家・小山内美江子が、「十五歳の母」のエピソードのモデルとしたのは、その放送の6年ほど前、実際に中学3年で妊娠し、自ら働いて費用をつくると、たった一人で産院で出産したという女性であった。小山内は彼女のことを知り、自身も離婚後、働きながら子育てをしてきただけに色々と考えさせられたという。
《一人前の大人でも、子供を抱えて働くということは大変だが、A子さん[引用者注:小山内による仮名]は、十五歳で母となったばかりに、おそらく好奇な目で見られたことも多かったろうし、ゆえなくして非難されたこともあっただろう。にもかかわらず、子を産んだというのは犯罪ではないのだ》(『小山内美江子の本2』労働旬報社、1980年)といった小山内の思いは、そのまま劇中の雪乃に反映されている。
しかし、「十五歳の母」の執筆は小山内にとって苦しい仕事であったという。当時の心情を彼女はこう吐露している。
《ストーリイ自体は、始めから書くと決めていたので、何の迷いもありませんでしたが、いざ書き出すと、まだ十五歳、おそらく未経験にちがいない少年少女俳優が、ドラマの上とは言え、性行為を認めなければ話は進行しない。にもかかわらず、私は書くべきセリフを探し出せず、ただ脂汗を流すばかり、その子供たちが可哀そうで、親御さんに申訳なく、これ程オロオロしたのは始めてでしょう》(『テレビドラマ代表作選集 1980年版』日本放送作家組合編集・発行、1980年)