1979年11月30日、TBS系のテレビドラマ『3年B組金八先生』の第6回が放送された。同回は、「十五歳の母」というサブタイトルのもと前々週から3回にわたって続いた一連のエピソードの一応の完結編であり、杉田かおる(当時15歳)演じる中学生・浅井雪乃が同級生との子どもを妊娠・出産するという展開は、当時大きな反響を呼んだ。最終回の視聴率が39.9%を記録した『金八』が生まれた背景、その後に与えた影響とは……。(全3回の3回目/はじめから読む)
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ドラマに描かれた“1970年代の風景”
現在、ネット配信もされている『3年B組金八先生』の第1シリーズを改めて視聴すると、時代の先を行っているようなところがある一方で、この時代ならではと思わせるところも当然ながらある。
前者でいえば、赤木春恵演じる君塚校長が、出産を決めた生徒の雪乃を守るため、直接彼女と会って話をするばかりでなく、直接には描かれないものの教育委員会との折衝など管理職として奔走したことが特筆される。脚本を手掛けた小山内美江子によれば、当時、東京都内には公立中学の女性校長がすでに5人おり、そのなかの一人が赤木にそっくりで参考にしたという。
後者では、金八先生がアパートではなく、同僚の池内先生(吉行和子)の実家に下宿していることにちょっと驚かされる。その家では、池内の母・シカ(都家かつ江)が雑貨店を営んでおり、やはり金八の同僚で、池内とは親戚にあたる新任の田沢先生(名取裕子)も下宿していた。この家が思わぬ形で雪乃とかかわることになる。
雪乃は、両親が東大を目指していた兄にかかりっぱなしで、自宅では妊娠する以前からないがしろにされていた。当然出産を許してもらえるわけもなく、居場所を失った彼女を受け入れてくれたのが池内家だったのだ。家主のシカは江戸っ子らしい気っぷの良さで、彼女をじつの娘か孫のように温かく迎え、何かにつけて世話を焼いてくれた。こうした展開も、地方からの上京者など若者が一般家庭に下宿する習慣がまだギリギリ残っていたこの時代(70年代末~80年代初め)だからこそ、成立しえたのだろう。