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名子役→13歳で独立→事務所を倒産させてしまった杉田かおるは…

 雪乃を演じた杉田かおるは、幼い頃より名子役として知られた。しかし13歳のときにそれまで所属していた児童劇団から独立し、歌手になろうと個人事務所を設立したものの、レコードがちっとも売れず、すぐに倒産させてしまう。そこで抱えた借金を肩代わりしてもらう形で浅井企画に移籍すると、返済のため仕事は選んでいられなかった。『金八』はそんな時期に出演した作品の一つだった。

1978年撮影、13歳当時の杉田かおる。15歳の頃に『3年B組金八先生 第1シリーズ』で同級生の子どもを妊娠する浅井雪乃役を演じた

 杉田はこうした履歴を自伝『すれっからし』(小学館文庫、1999年)に赤裸々につづっているのだが、そのなかに出てくる、『金八先生』出演当時、雪乃の相手役である宮沢保を演じた鶴見辰吾から言われたという一言にはつい笑ってしまう。

《ぼくは、かおるちゃんとは絶対に結婚しないぞ。なぜなら、ぼくとかおるちゃんが結婚式をしたら、仲人は武田鉄矢さんに頼まなければならないでしょう。そんなのドラマの中だけでたくさん。それだけはゼーッタイにいやだからさ》

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 鶴見もまた子役出身だが、『金八先生』スタートの前年、1978年に出演したNHKドラマ『天城越え』でずいぶんしごかれ、これではまずいと事務所に内緒で演劇学校に通ったという。『金八』出演時には、街を歩いていても「あっ、保だ!」と役名で呼ばれるようになり、ドラマが社会現象になっていくのを実感した。だが後年、《今、思えばすごく恵まれていましたが、当時の自分としてはその状況に戸惑いもしたし、正直、反発も覚えました。金八卒業後は、早く保のイメージを打ち壊したいと、そればかり考えていましたね》とも振り返っている(『週刊文春』2013年8月15・22日号)。

鶴見辰吾 ©文藝春秋

生徒役を一人一人説教する日々が続いた

 鶴見から絶対に仲人にはしたくないと言われた武田鉄矢は、このドラマのオファーを受け、裏番組に視聴率ではどうせ負けるんなら……との思いで引き受けたという。だが、生徒役の子供たちはちっとも自分の言うことを聞かず、当初は苦労したらしい。子供たちは収録中も自分勝手に振る舞うので、一人一人、スタジオのセットの隅に呼び出しては説教する日々が数ヵ月続いたという。