まさかの大逆転で入賞
竹中さんが復活させたハガキは、最終審査に残っただけでなく、なんと入賞してしまった。
「大逆転があるから面白い」と竹中さんは笑う。
ただ、「大人の常識」で考えると、「入賞が問題を大きくしてしまうのではないか」と不安になるのも事実だ。安岡事務局長は「私が親なら怒りたくなる」と思った。しかし、入賞を知らせるために中学校に電話をすると、「先生は嬉しそうにしていました」と安岡事務局長は話す。
教育現場にも、これぐらいのおおらかさが必要なのかもしれない。
この中学校からは同年度、生徒のハガキも1通入賞した。もし、「出し忘れ」の告白しか入賞しなかったら、教員の立場はなかったはずだ。
10歳差でも世代による感じ方の差がかなりある
コンクール事務局の竹中さんには、2023年度の第20回に寄せられた中で特に印象に残ったハガキがある。
<「今日はペットの日じゃけん、八時までに出しておいて。」
土曜日の朝、妻に言われた。
うちの庭に近所のペットたちが集合すると思い愛犬を庭に出した。
ペットとはペットボトルの事で今日は回収日だったと後から聞いた。
爆睡中、無理やり庭に放り出してごめん。『ペットのダリアへ』『飼い主より』>(第20回記念特別三山ひろし賞)
この年度は開催20周年を記念し、南国市出身で、同市観光大使を務める歌手・三山ひろしさんも審査に加わった。
竹中さんは「お父さんが寝ている犬を一生懸命に外へ出す情景が浮かんできて、笑えました。『ペットの日』と言われて、普通は自分の家にペットが集まるとは考えません。なぜ、そう思ったのか、ご本人に問い質したくなりました」と、ハガキの内容を思い出してケラケラ笑う。
一方、安岡事務局長には「ピンとこなかった」。
竹中さんは海の近くで育ち、安岡事務局長は山間部で育ったので、子供の頃の体験が違う。好みの個人差もあるだろう。だが、10歳しか違わない。それでも、「世代による感じ方の差がかなりある」と、安岡事務局長は考えている。
人間関係が疎遠になり、不安になることもある
実行委員会で副委員長を務める徳久さんは、ハガキを読んだり、「ごめんなさい」について考えたりしていて、時代の変化を感じることがある。
「人間関係が疎遠になり、素直に『ごめんなさい』を言う機会が減っているような気がします。個人情報の保護が叫ばれるようになった影響もあるのでしょうか、近所のお付き合いさえ乏しくなり、おすそわけの文化もなくなりました。こんな状態で災害が起きたら、お互い助け合っていけるのだろうかと不安になることもあります。これからは『隣の人が困っていたのに、助けられなくてごめん』などというハガキが届くようになるかもしれませんね」