「ごめんの町」で「言いそびれた『ごめんなさい』」をハガキで募集したら面白い――。故郷のためにそんな提案をした漫画家・故やなせたかしさん(1919~2013年)は、高知県南国市の後免(ごめん)町で「地域起こし」の火付け役となった。これを受けて地元の人々が始めた「ハガキでごめんなさい」全国コンクールは、2024年度で第21回を迎えた。

「ごめん」には「ありがとう」が響き合う

 ダジャレが大好きなやなせさんらしい発想だったが、深い意味があった。「ごめん」には「ありがとう」が響き合うと考えたのだ。謝罪と感謝は正反対のようだが、実はつながっている。

 このため、「後免町駅」には「ありがとう駅」という愛称までつけられた。そうした考え方が間違っていなかったことは、コンクールに寄せられるハガキで証明されていった。

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 江戸時代から交通の要衝として栄えてきた後免の町は、現在もその位置づけが変わっていない。南国市内には空港があるほか、三つの鉄道・路面電車が走っている。

 それだけに駅名はややこしい。

土佐くろしお鉄道「ごめん・なはり線」の「後免町」駅を出発する列車(南国市)

 JR土讃線の駅は「後免」。

 第三セクター・土佐くろしお鉄道「ごめん・なはり線」の駅は「後免」と「後免町」。

「とさでん交通」の電停は「後免町」「後免東町」「後免中町」「後免西町」。

『後免町』だと思って『後免』で降りたが…観光客は混乱

 特に間違えやすいのは「後免」と「後免町」だろう。両駅を結ぶのは土佐くろしお鉄道「ごめん・なはり線」だけで、営業キロ数はわずか1.1 km。歩けば15分ほどしか離れていない。

「後免」駅はJR土讃線と土佐くろしお鉄道「ごめん・なはり線」が共同使用している(南国市)

「地元で間違える人はさすがにいませんが、観光客は結構混乱するようです。『後免町』だと思って『後免』で降りた。どうもおかしい。やなせ先生がデザインした『ごめん生姜(しょうが)地蔵』が駅前にあるはずなのに、どこを探してもない、というふうになるのです」と、徳久衛(とくひさ・まもる)さん(64)が解説する。

やなせたかしさんは『高知新聞』に「ごめん町」というタイトルでコラムを書いた。徳久衛さんはこれを写した掲示板を作製した(南国市後免町)

 徳久さんは「ごめんの町」のキーマンだ。南国市では生前のやなせさんと最も親しく交流してきた。「ハガキでごめんなさい」全国コンクールでは、後免の人々で作る実行委員会(西村太利委員長)の副委員長を務め、運営の中心になっている。