少し変わった「ありがとう」もあった。
<「こんなに沢山の梟(ふくろう)、どうするの?」
我が家の窓の桟にはズラリと梟の置物が並んでいる。夫が買い集めたものだ。私はいつも邪魔に感じていた。
先日、夫が急死し、夫の日記に目を通していると《2003年6月4日、照れくさくて「ありがとう」や「好きだ」という言葉がなかなか言えない。だから私は感謝の気持ちを梟(不苦労)の置物に代えて、今日から妻に贈る》とあった。貴方の愛に気付けず…ごめんなさい。>(第7回ナンコクスーパー賞)
こうして寄せられた「ありがとう」や、実質的に感謝を意味する「ごめんなさい」は、あまりに多くて紹介しきれない。
「ごめん」を意識すれば、「ありがとう」は自然に浮かんでくる
「実はハガキだけじゃなく、手紙もいっぱい届きます」。コンクールを裏方として切り盛りしてきた徳久さんが話す。
「コンクールの後、実行委員会宛てに『こんな事業をしてくれてありがとう』という手紙が来るのです。『応募を機に直接ごめんなさいを言うことができた』という人もいました。それまでは、言いたくてもきっかけがなかったのでしょうね。わざわざ手紙をくれるのだから、よほど嬉しかったのでしょう。『コンクールを続けてきてよかった』と地元の皆で話しています」
ただ、やなせさんがつけた「ありがとう駅」という愛称はあまり広まらなかった。
愛称を売り出すような仕掛けやイベントをしてこなかったせいもあるが、「ごめん」という地名のインパクトが強すぎたのだと見られている。
「ありがとう」は「ごめん」の裏返しのような言葉だ。「ごめん」を意識すれば、「ありがとう」は自然に浮かんでくる。
「『ごめんなさい』は魔法の言葉です。口にすることで、わだかまりが消える。素直になれば『ありがとう』という気持ちになれるのです。
コンクールのキャッチフレーズは『優しい心になれる町 ごめん』。優しい心に一番寄り添える言葉が『ごめんなさい』だと思います。『ごめんの町』に住む私達は、『ごめんなさい』と『ありがとう』という二つの言葉を大切にしていきたいと考えています」と徳久さんは語る。
やなせさんの気持ちの代弁だろう。
撮影=葉上太郎
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第21回の応募は2024年11月30日まで(当日消印有効)。
問い合わせは、現在の事務局が置かれている南国市観光協会