若者からのハガキには「ありがとう」が多い
「ありがとう」という言葉そのものを書いたハガキも多い。
<東京から札幌への転勤を命じられ、「左遷かー」などと落ち込んで帰った私に「札幌だってー。一度は住んでみたいと思っていた街なんだ。良かったね。」と明るく迎えてくれたっけ。そんな君に「人事だと思って気楽に言うなよ」って文句を付けたけど、君のあの一言で前向きに楽しく札幌での生活を過ごせました。今さらだけどごめん、そしてありがとう。>(第14回南国市金融団賞)
休職中の夫にケーキを持ち帰った妻といい、左遷を明るく捉え直せるよう仕向けた妻といい、夫から妻への感謝は尽きない。
<お姉ちゃんへ
いつもけんかしたとき、ひどい事を言ってしまってごめんなさい。家の経済的な理由で進学を諦めて就職したお姉ちゃんは、私が進学したいと言ったとき、一番に「ゆめに行かせてあげて」と親に言ってくれたね。私は気持ちを伝えるのが下手で言えなかったけど、本当にありがとう。こんなに優しい姉がいて、私は幸せ者です。>(第15回優秀賞)
地元の南国市にある県立高校生が書いた。黄色いヒマワリが大きく描かれていたのは、姉が太陽を思わせる存在だからだろうか。
<バスの運転手さんへ
私が部活でつかれてバスの中で
寝てしまったとき、わざわざバスを
止めて起こさせてしまいすいませんでした。
六年間乗せていただいて
ありがとうございました。>(第17回優秀賞)
この乗務員は通学する生徒の顔や停留所を一人一人覚え、静かに見守っていたのだろう。通学で乗ったバスの運転手に対する感謝は1通ではない。
「ありがとう」を言えなかったことに、「ごめんなさい」というハガキもある。
<僕が高知から居なくなって約三年、僕は高知の友達に謝りたいことがあります。最後の日、僕はみんなに「今まで ありがとう」の一言も、照れ臭くて言えませんでした。ごめん。少し後悔しています。でも次会えた時は期待しちょってよ!>(第15回高知新聞社社長賞)
黒い学生服姿の生徒が5人、笑ったり、肩を組んだりして、じゃれ合っている姿が描かれていた。香川県丸亀市から届いた。
若者からのハガキに「ありがとう」が多いのは、それだけ率直に「ごめんなさい」と言える年代だからか。