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遊女よりも「美少年」と遊ぶほうが高級

他方、宿場の旅籠(はたご)屋には、飯盛女という遊女を置くことが、道中奉行から認められていた。江戸四宿の品川、内藤新宿、板橋、千住は、江戸市中からも近いために、江戸の男たちからも手頃な遊里として人気を集めた。そのほか、茣蓙(ござ)1枚を持って夜道に立った街娼である夜鷹もまた、安価で自らの体を売っていた。いわば「立ちんぼ」である。

また、陰間(かげま)と呼ばれる男娼もいた。陰間を置く陰間茶屋は、現在の日本橋人形町付近の芳町で賑わいを見せた、10代の若く美しい男子が、振袖に袴姿に白粉を塗り、あたかも歌舞伎の女形のような格好で、自らの体を売った。客は料理茶屋の座敷に呼び出して遊ぶため、陰間買いは普通の遊女を買うよりも高くついた。

平賀源内の『江戸男色細見(菊の園)』によれば、「一切り」(約2時間)で金1分(約2万5000円)、店から「他行所」で連れ出すならば金2両(約20万円)、「仕舞」まで丸1日自由に買うならば、金3両(約30万円)もしたという。

永井 義男(ながい・よしお)
小説家
1949年生まれ、97年に『算学奇人伝』で第六回開高健賞を受賞。本格的な作家活動に入る。江戸時代の庶民の生活や文化、春画や吉原、はては剣術まで豊富な歴史知識と独自の着想で人気を博し、時代小説にかぎらず、さまざまな分野で活躍中。