“キムタク”のブランドはなおも健在で、そこに頼る企業は多い。2022年10月時点での木村のCM契約社数は9社。この数字は当時の全ジャニーズタレントの中でトップだった。1996年2月時点では5社だったことを考えると、この四半世紀、様々なブランドの顔を務め続けた上で、なお増えていたのである。
その一方で、近年の木村は、作品を作るのは「すべてのスタッフとの共同作業」(※2)と話す。主演映画の舞台挨拶などでも「俳優部のひとりとして……」と、あくまで自分は作品の一部であるという言葉の選び方をしたり、2023年には月9ドラマの会見で「月9ってもう言わなくても……」とフジテレビの“月9煽り”に苦言を呈したりと、作品づくりにより邁進しようとする姿勢が垣間見える。
「自分を数字にしてしまったら、それでおしまいだから」
木村拓哉は96年の『ロングバケーション』以降、フジテレビのドラマの看板枠である「月9」の主演を11回と、最も多く務めてきた。平成の連続ドラマの視聴率トップ5は全て木村の主演作である。『HERO』ひとつとっても、11話全てが視聴率30%超えという日本の連ドラ史上唯一の快挙を遂げており、劇場版の興行収入は81.5億円……など、木村を表す記録的な数字は多く存在する。日本の芸能界で最も数字を持つ男と言ってもいいだろう。
だが、近年の発言にふれると、自分たちが力を結集して創り上げた作品に対して、ずっと「月9」のような商品的な煽りをされることや、自身が芸能界の真ん中のような表現をされること、視聴率のみでその成果をジャッジされることなどに抵抗があったのではないかとも思う。
木村が数字について語るときは「自分を数字にしてしまったら、それでおしまいだから」(※3)といったように、不思議と“終わり”を示す言葉とセットになる。50歳を迎え、こうも語っている。
「数字はテレビ局や映画会社の人が気にすること。俺、そこじゃないもん。そこを追っていたら…(中略)もう辞めてんじゃないですか」(※4)
最も数字を持つ男は、数字を追わない男でもあるのだ。
