30年来のジャニーズ(現STARTO ENTERTAINMENT)ファンであり、『ジャニーズは努力が9割』(新潮新書)の著者でもある霜田明寛さんが、2023年の一連のジャニーズ性加害問題以降に感じてきた葛藤と思いを込めた『夢物語は終わらない ~影と光の“ジャニーズ”論~』(文藝春秋)を上梓した。

 ここでは同書より一部を抜粋して、霜田さんが大学1年生の時に初めて受けた「ジャニーズJr.」オーディションの日に“その人”と出会ったことや、年下の少年の思いもよらぬ覚悟に困惑した体験を紹介する。(全3回の1回目/続きを読む

旧ジャニーズ事務所 ©時事通信社

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夢のオーディション会場へ

 “その人”に会えば人生が変わる。

 そう信じてきた人に対面を果たせる日は、願い始めて8年後にやってきた。

「ジャニーズJr.になりたい」

 思いを込めて送り続けた履歴書に4回目にして返事が来たとき、僕は大学1年生になっていた。何度確認しても、その封筒はジャニーズ事務所からのオーディション通知だった。封筒をあけながら、人生の半分をかけて願っていた夢の輪郭に触れた気がした。

 絶対になくさないように机の中にしまって、取り出しては夢ではないかと確認する日々を10日ほど繰り返し、その日はやって来た。

 2004年7月。オーディション会場となったテレビ東京のスタジオ周辺に着くと、少年たちだけではなく親の姿も多く見られた。それもそのはず、そこに呼ばれていたのは小学生から中学生が主で、自分と同じ18歳以上を見つけるのは至難の業だった。スタジオ内は親も入ることができ、席も用意されていて、そっちの方を見ると、まるで授業参観のようだった。全員がやる気に満ち溢れているかと思いきや「連れてこられた」という雰囲気の少年も多く、親たちのほうが浮わついているのを感じ取れた。