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「この沿線で一番強いんは、ワシや」
無言のうちにそう語りかけてくる。「喧嘩で決着つけようや」と言いたげな輩が大勢うろうろしていた。
喧嘩で負かした大学生に「女の子、連れて来い。紹介せえ」と…
許が「お客さん」としていたのは、一番かっこつけていて一番強そうで一番金を持っていそうな奴。これ以上のカモはない。
いざ開戦となれば、短期で決着。瞬間に一発入れて、バチバチッと片付ければおしまいだ。
もっとも、最初から金目当てだったわけではない。当初は金を取っていなかった。
「女の子、連れて来い。紹介せえ」
金の代わりにそんな注文をつける。
私立の女子校に通う生徒たちは同じく私学の男子校とつるむのがお決まりだった。何かとご縁があるらしい。その点、彼の通う高校は共学で府立。女子校の子たちがそんなダサい学校を相手にしてくれるはずがない。
喧嘩で負かした大学生たちは、女子高生を紹介してくれた。約束は果たしてくれた。だが、あくまで「紹介する」だけ。
女の子は一度は会いに来てくれるものの、後が続くことはなかったという。無理もない。なにしろ許はおっさんのような風体。札付きの不良である。許の晩稲ぶりはここでも変わらない。女の子がいてくれるだけで嬉しかった。指一本触れてもいない。