中村憲剛が感じた小野伸二の「特別な才能」
スペイン代表のラミン・ヤマルも「ギフテッド」な存在でしょう。彼は日本の中学生年代にあたる15歳でFCバルセロナのトップチームでデビューし、16歳でスペイン代表としてユーロ2024に出場しました。日本なら高校2年生の学年で、ヨーロッパチャンピオンの一員となったのです。
スペインは4―3―3のシステムを国レベルで成熟させており、それぞれのポジションごとの役割がはっきりしています。FCバルセロナも4―3―3のシステムを基本としており、ヤマルがスペイン代表にフィットしやすい環境が整っていたとも言えます。そうはいっても、先天的に高い能力を持っているのは間違いなく、競技レベルの高いチームやリーグを自らの日常とすることで、才能を磨いているのだと思います。
僕が現役時代に対戦したり、チームメイトとしてプレーした選手では、元日本代表の小野伸二さんは特別な才能の持ち主でした。味方からのパスが乱れたり、自分の体勢が崩れたりしても、次のプレーに最適な場所にボールを止めて、蹴ることができていました。
トラップがとにかく「なめらか」なのです。伸二さんとその話をすると「みんな、できるよ」と笑うのですが、あのトラップは誰にも真似できません。芸術の域に達していたとさえ感じます。
伸二さんをプロ入り前から知る方に聞くと、「小学校時代から変わらない」と言います。「ひと目見れば小野伸二と分かった。それぐらいずば抜けていた」と。
中村憲剛が「すごいな」と感じたなでしこジャパンのキャプテン
僕にも似た経験があります。
僕は小学校1年からサッカーを始め、東京都府中市の府ロクサッカー少年団に入りました。そのチームに元なでしこジャパンの澤穂希さんがいたのです。澤さんは僕の2学年上でした。
小学生年代では男子と女子が一緒にプレーすることが珍しくなく、澤さんは僕らのチームのエースでした。身体が大きくてスピード豊かで、シュートも力強い。2学年下の僕からすると、「すごいな」と仰ぎ見る存在でした。なでしこジャパンのキャプテンとして女子ワールドカップでチームを世界一へ導く姿に、小学生当時の澤さんが重なったものでした。