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事情をご存じないのに、「選考会でフォーマルな格好じゃないのは失礼」と決めつけるのは、「男性がネイルをするのは変」「就活はリクルートスーツを着なくてはいけない」と同じような、根拠のない謎のマナーやルールに縛られた思考回路じゃないかなと感じます。そういうものを押しつけてくる人が減り、誰もが自分の好きな格好を楽しめる世の中になりますようにと願う次第です。
――作中、「ネイルアートはチャラついたものなどではなく、ネイリストの職人技と芸術的センスが結晶した作品」という文章がありました。『ゆびさきに魔法』というタイトルからも、強い信念を感じます。
三浦 私は、ネイルは魔法みたいだといつも思っています。永遠には残らないけれど、ゆびさきの小さなスペースで人を幸せにしたり、活力を与えたりできる不思議な力を持つ。それが私にとってのネイルです。
ネイルは、生きるうえで不可欠なものではありませんが、ネイリストさんにネイルをしてもらうことで、心が癒やされたり、元気になったりする人も、大勢いらっしゃると思います。
そういう意味では、音楽や映画、小説とネイルは同じだと思います。もっと言うなら「職人仕事」という観点では、ネイリストと小説家は非常に似ている。
お腹いっぱいにならなくても、資産価値にならなくても、誰かの心を潤し、人生を豊かにする。そんな魔法の力がネイルにはあると私は感じていますし、小説にもそんな力があるのではないかと思っています。