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「舞台に立っている時がいちばん生きてる感じがする」
しかし、高畑は公演後に振り返り、結果的に、自身が30歳になるとともに『ミス・サイゴン』も日本初演から30周年を迎えたタイミングで演じられたのは運命だったと語っている。社会の状況も2年前とは大きく様変わりしていた。
《ウクライナが侵攻されている今、戦争で犠牲になる人々を描いた作品を上演する意義ってすごくあったと思うんです。ともすれば、2年前にはファンタジーのように見えた物語も、今はリアルに感じる。しかも私自身、コロナ禍で生と死の境目の距離が縮んだ感じがしていて、そういう中でキムを演じられたのはすごく感慨深かったです》(『anan』2022年12月21日号)
話は前後するが、高畑は朝ドラ『とと姉ちゃん』(2016年)の撮影を終えたとき、両親から「お疲れさま。早く舞台が観たい」と言われたという(『週刊文春』2017年1月26日号)。彼女自身、本領は舞台という思いが強いのはたしかだ。あるインタビューでは《私は舞台に立っている時がいちばん生きている感じがするんです》と語っていた(『日経エンタテインメント!』前掲号)。
昨年(2023年)には、高畑がかねて自分のために芝居を書いてほしいと頼んでいた同世代の劇作家・演出家の根本宗子の手になる『宝飾時計』が初演された。根本は完全に当て書きで、10歳から29歳まで一つのミュージカルで主役を演じ続け、“奇跡の子役”と呼ばれた女優の役を高畑に与えた。同作のクライマックスで、彼女が椎名林檎から提供されたテーマ曲を歌うシーンは圧巻であった。