「2つ入っています。2000万あります」

 自民党の下村博文元文科相が、文藝春秋とノンフィクション作家・森功氏に名誉を毀損されたと主張していた民事訴訟を取り下げた。11月22日付で、下村氏が東京地裁に対して「訴えの取下書」を提出し、地裁から文藝春秋の代理人に連絡が入った。

自民党の前議員ら向け懇談会後、記者団の取材に応じる下村博文氏(12月8日) ©時事通信社

 下村氏が名誉を棄損されたと訴えたのは、「文藝春秋」2023年11月号に掲載した「森喜朗元首相へ献上された疑惑の紙袋」

 森功氏はこの記事で、自民党安倍派(清和政策研究会)の会長代理だった下村氏が、2023年7月6日に東京・赤坂にある森喜朗元首相のプライベートオフィスを訪ねた際の様子を詳報。取材によれば、下村氏は森元首相に土下座をした上で、安倍派の会長に就任するために、薄茶色の紙袋を手渡そうとした。森功氏は、その場面を次のように描いている。

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〈「2つ入っています。2000万あります」

 森の怒気は呆気に変わった。

「君は、何というバカなことをするんだ。清和会の会長を2000万円というそれだけの金額で買えるとでも思っているのかね。もう帰ってくれ。これ以上ここにいたら、俺はこのことを人に言うぞ。おい、お帰りだ」〉

 結局、下村氏は紙袋を持ち帰り、会長就任は叶わなかった。

森喜朗元首相 ©文藝春秋

 下村氏は同年10月17日の会見で、記事の内容を「事実無根」と否定。名誉を毀損されたとして、森功氏と文藝春秋を相手取り、慰謝料など1100万円の損害賠償を求める訴訟を起こしていた。

「立ち上がった下村君はモゾモゾしながら……」

 ところが、その後、「文藝春秋」2024年6月号及び「文藝春秋 電子版」では、森功氏が約240分にわたって森元首相にインタビューした「森喜朗元首相『裏金問題』真相を語る」を掲載。森元首相はこの記事の中で、次のように語っている。

〈立ち上がった下村君はモゾモゾしながら、脇に置いていた紙の袋を私の目の前に差し出しました。

「とにかくご無礼もお許しいただいて、これはわずかですが」

 驚きました。