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しかし、他方で論理的な正当性がどちらにあるかは関係なく、「アンチをも包摂する度量のある立花」像をファンに見せることは結束を固める効果を持ってしまっていることもまた現実なのだ。選挙戦でこうした構図に巻き込まれず、かつ自身の正当性を主張することはかなり重要だったように思う。

そこで第三の指摘につながる。

反ワクチン論で知られる「ごぼうの党」の奥野卓志氏が選挙戦も最終盤に差し掛かった投開票日前日の12月14日に急遽、応援にやってきたが賛否を含め選挙結果からみれば効果は限定的だった。選対幹部によれば、南出氏が打ち込んできたボクシング界の人脈を通じて日程が決まったという。

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奥野氏は現職を「同志」と呼びかけたが、ここが選対としてもギリギリの許容できる一線だったことは想像に難くない。

反ワクチン論ではなく、これまでの実績を訴える

南出氏は、強い反ワクチン論で知られる参政党の神谷宗幣氏が中心になって立ち上げた「龍馬プロジェクト」にも名前を連ねている。しかし、今回の選挙で神谷氏本人は応援にはやってこなかっただけでなく、立花氏が無料化を掲げた高齢者への新型コロナワクチン定期接種の公費負担問題も選挙戦では論点化を避けた。

この判断の是非は分かれるとは思うが、少なくとも選挙戦略として妥当だった。道すがら、南出陣営の選対幹部とこんな会話になった。

「立花陣営のYouTubeは票が読めないし、こちらとしては後れを取っていることはわかっている」

「だったら神谷氏やその周辺に応援を……?」と彼に問うと、幹部はだまって首を横に振るのだった。

新型コロナワクチン問題を徹底的に避ける代わりに、街頭で訴えたのは実績だった。駅前に図書館を作ったことや、行財政改革の成果、急性期メディカルセンターの開設、そして3期目に向けて中学給食の自校調理化など生活に近い争点を矢継ぎ早に訴えていった。

オーガニック給食なるものを肯定的に語ったところには危うさを感じたものの、幅広く多角的な実績と政策を打ち出せるという現職の強みを最大限に生かすという戦略に舵を切ったことはよくわかった。