「空中戦では相手には勝てない」
今の泉大津市市議会議長で選対の中心にもいた堀口陽一(大阪維新の会)はこんな見立てを示していた。当選5回を数える、元救命救急士はいかにもベテラン議員らしく、険しい表情を崩さないまま具体的な数字と共に選挙戦を語るのである。
「今回ほど票読みが難しい選挙もない。今のところこちらが固めた票は1万3000〜4000票といったところかな。前回と同じくらいの票は出てくると思うが、向こうの票は正直読めない。期日前が増えているから、投票率も上がるだろう。
上がった分がそのまま向こうに流れるということはないと思う。現職は訴えることもたくさんある。(インターネットを中心とした)空中戦では相手には勝てない。ならば、やってきたことを実直に訴えた方がいい。
もし向こうが9000票くらい掘り起こしていれば、かなり差は詰まっているとみたほうがいい。当日の出方次第でどっちに転ぶかわからないくらいの差になってういると考えないといけない。あっちに人は集まっているのは間違いないし、特に駅前エリアなんかは浮動票も多い。だからこそ、この選挙ばかりはどうなるかわからない。私は会議でも厳しい見立てを言ってきたつもりだ」
地元の選挙現場をよく知り尽くし、現職の周囲を固めた議員たちは立花氏のやり方を泡沫扱いせず、甘い想定こそを戒めていたということがわかる重い一言だった。
「普通の候補者として扱う」ことが最大の対策
一人の候補者と認めるということは、分析の対象にするということだ。ワンイシューに陥りがちな個別論点の対立を周到に避けながら相手の出方を伺い、自分たちの政策を一つのパッケージとして訴えることによって有権者の判断に委ねる。
今回の選対の判断は、政治的な立場を超えて、トリックスターと向き合う際の一つの指針になったというのが私の評価だ。
同時に、これはマスメディアの姿勢にも重要なヒントを与えている。
拙著『 「嫌われ者」の正体 日本のトリックスター』(新潮新書)を刊行して以降、メディア関係者から「トリックスター的な候補者をどう扱えばいいのか」という問いをもらってきた。私の解は「普通の候補者として扱う」だ。