宴が終わると…
イベントには作家やミュージシャン、お世話になった昔の友人など、各界の予想外に多くの人たちが来てくれた。ただただ感謝である。しかし宴が終わり、圧倒的に混雑する歌舞伎町で孤立無援な自分をあらためて曝け出してみると、疲れが回ってがっくりしたのも事実だ。
評論家の鈴木邦男さんは2023年、79歳で亡くなった。老いたものにとって同年代の仲間の死はこたえる。明日は我が身かと思うことしきりで、友は死んでしまったが自分は生きているという一人取り残された孤独をひたすら感じる。
80歳でペットロスに
自宅に帰ってから2年。私にとって大きな悲しみは「猫の死」であった。
4匹いた我が家の猫たちだったが、この2年でみんな死んでしまった――。高級老人ホームに入る前から飼っていて、長い付き合いである。私がホームから帰るのを、まるで死なずに待ってくれていたかのようでもあるが、なんという喪失感なのだろう。
4匹とも20年近く生き抜いた猫たちだ。人間の年齢でいうと、私と同じ80歳を超えると思うと余計に悲しい。
いわゆるペットロスというものに80歳でなろうとは。この思いをSNSのフェイスブックに書いたところ、多くの友人から優しい言葉をかけていただいた。
「つらいですよね。家で待っていてくれる猫に勝るものはないです」
「我が家も経験あります。そのときは大泣きしました」
やはり人でも動物でも、愛する者の死は同じように悲しい。それも、今の自分のように80歳になると、さらに「死」というものへの感情が、自分自身の存在も含めて複雑に絡みあってくる。
「生命は尊いだと馬鹿言っちゃいけません。生命は尊くも醜くもありません。ただの自然現象です」とは私が尊敬する哲学者・池田晶子(2007年没)の言葉だが、実に衝撃的だ。