筆者は深津が28歳で主演した『恋ノチカラ』(02年)の現場で何度か取材の機会に恵まれたが、『踊る~』のイメージとはまったく異なる仕事に恋に生きる等身大のOLになりきって演じており、役なのか本人なのかを錯覚するほどだった。
その演技力、存在感は業界内でも定評があり、38歳で主演した三谷幸喜監督の映画『ステキな金縛り』(11年)では、第35回日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞。三谷も女優・深津絵里にベタ惚れで、こう絶賛している。
「深津さんは歌でも芝居でもカンのいい人。(アドリブでも)絶対に笑わない。NGも出さない。もう鉄の女。絶対に崩れないタイプ」(「ぴあ」のインタビューより)
妻夫木聡とのリアルすぎるベッドシーンが話題に
恋愛ドラマへの出演は多くても清純派なイメージが強かった深津が、激しいベッドシーンに挑んだのが、37歳で出演した映画『悪人』だった。
地方でなんの刺激もない退屈な毎日を送る平凡なOL役の深津は、出会い系サイトで出会った妻夫木聡演じる男性との愛に溺れていく。
引っ込み思案な日常生活から妻夫木を激しく求める姿の変貌ぶりがすさまじく、2度のベッドシーンも全裸で熱演。
殺人を犯した妻夫木に警察の追っ手が迫り、逃避行中のホテルで妻夫木が深津をいきなり布団の上に押し倒すと、猛々しくあお向けの深津をうつぶせにひっくり返す。深津は抵抗するどころか自ら少し腰を浮かせ、ミニのスカートから白く柔らかそうな大腿部が露わに……。
ここでカメラが上からのアングルに切り替わり、白く美しいヒップと、細くすらりとのびた美脚が画面いっぱいに映る。妻夫木はそのまま深津の下着を引きずり下ろし、自らもズボンと下着を脱ぐと、そのまま覆いかぶさる。
深津の適度に抑制がきいたあえぎ声と、情事の自然音が興奮度を高める。互いに息を弾ませて荒々しく絶頂に達するシーンは、“本番疑惑”がささやかれるほどの迫力だった。
深津はこの映画でモントリオール世界映画祭最優秀女優賞を受賞。改めて世間に女優力を見せつけた。