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メガバンクで“勝ち組”と言えるほど順風満帆な生活を送っていたが…

 就職先のメガバンクでは、約3年を過ごした。仕事環境は良好で、入社2年目には社内の「小さな企画」でリーダーも経験。数字を扱う業種ならではの「1分1秒」を争う職場は「神経質な自分に合っていた」という。

「仕事のストレスはなかったです。完全週休2日制度で、残業もほぼない。福利厚生も手厚くて、職業柄、貯金や投資の知識も自然と増えました。実家暮らしだったのもあって十分に貯金できたし、仕事終わりには同僚と一緒にご飯を食べて、休日にはデパートで好きなコスメを物色するような生活を送っていました」

 

 社会人としては、いわば“勝ち組”と言ってもさしつかえないほどの順風満帆な生活。しかし、やはり「大きなステージで歌う」という夢は拭いきれなかった。仕事内容は肌に合っていたが「職場でのルーティンを、定年まで続けていくのか……」と自問自答を続ける日々。その葛藤は次第に、心身の不調となってあらわれた。

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「このままではダメになる」将来への葛藤から体調不良に…

「入社2年目の頃からオーディション情報をよく見るようになって、ずっと『この先もステージで歌えなかったら、死ぬ間際に後悔するんじゃないか』と考えていました。オーディションによっては、年齢制限が迫っているものもあったし『このタイミングを逃したら一生、夢を叶えられないかもしれない』と焦って。

 ある日ふと、満員電車で立っていられなくなり、途中下車した駅で電車を何本か見送っているうちに『このままではダメになる。自分の人生、後悔しないように自分で決めてみたい!』という思いが頭をよぎって、その場で退職しようと決めました」

 すべては、親のために。そう思って生きてきた折原さんにとっては人生初となる、自分自身のための決断だった。

 

 善は急げだ。現在所属するグループのオーディションへの応募後、勤めていたメガバンクに退職届を提出。意思確認のための面談では「歌の世界に進みます」と伝えたが、上司からは「将来もあるんだし、考え直したら?」と慰留された。

 それでも、折原さんの意思は堅い。安定した職を捨てて、アイドルとして立つステージへと歩きはじめた。

撮影=深野未季/文藝春秋

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