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 休戦ラインを挟んで北朝鮮と軍事的に対峙している安保状況にも多大な影響を及ぼす。「常備兵力50万人」の維持という韓国国防部の目標は22年に崩れ、現在は47万人の兵力で防衛しているが、45年には32万9000人まで減る。118万人の兵力を保有している北朝鮮軍の4分の1の水準まで下がってしまうのだ。衝撃的なのは、総人口では2倍以上なのに、子供の数は北朝鮮よりも少ないという事実だ。21年を基準にすると、0~4歳までの韓国の人口は、北朝鮮の170万人より少ない165万人だった。「韓国の最大の敵は北朝鮮でなく超少子化」と言われるゆえんだ。

なぜ韓国の少子化は進行してしまったのか?

 世界的な進化学者のチェ・ジェチョン梨花女子大学大学院教授は、「韓国で子供を産んだらバカに思われる」と述べて物議を醸した。だが実際、韓国社会のそこここに、賢い若者たちが出産を忌避する要因が数え切れないほど転がっている。

 結婚情報会社の調査によると、韓国の若者の平均結婚費用は3億ウォン(約3300万円)近くで、このうち8割程度が新居のために使われる。これでは結婚段階からハードルが高い。ちなみに、会社員がソウルに25坪のマンションを購入するには、給料を一銭も使わずに36年間貯めなければならない計算だ(21年の市民団体の統計)。

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©AFLO

 子育てにおいても、世界一厳しい受験地獄と、法外な教育費が立ちはだかる。我が子を大学卒業させるまでには、前述の結婚費用と同等の3億ウォン程度が必要であり、韓国では「子供が2人以上いる家庭は金持ち」とも言われる。

 韓国特有の「見栄の文化」も障壁となる。韓国には「下車感(ハチヤガム)」という流行語があるが、これは車から降りる瞬間に周囲の人から向けられる視線を意味する。安っぽい自家用車から降りる時に劣等感を感じたら「下車感が悪い」といい、高級車から降りる瞬間、周りの羨望の視線を感じたときは「下車感がいい」というのだ。私の親戚も最近、「娘が学校でいじけるのが耐えられない」と、乗用車を外国車に替えた。とにかく、結婚と子供にはお金がかかるのだ。