東京は0・99、ソウルは0・55。何の数字だか、ご存じだろうか? これは、両都市の2023年の合計特殊出生率である。東京は統計を取り始めて以降、初めて「1」を割り込んだことで懸念が広がったが、韓国の首都ソウルの出生率は、そんな東京の半分強しかないのである。
韓国の“少子化地獄”で起きていること
実際、ソウルに住む私の近所でも、子供を見かけることが、すっかり少なくなった。近くの幼稚園は、いつの頃からかお年寄りのためのケアセンターになってしまい、廃校になった中学校の運動場は臨時駐車場として使われている。子供たちの笑い声が響き渡った家の近くの小さな公園は、飼い主の手に引かれて散歩に出た子犬たちの遊び場になって久しい。
ソウルだけではない。韓国の2023年の出生率は0・72で、OECD(経済協力開発機構)加盟国38ヵ国の中で6年連続、最下位を記録。「世界で最も子供を産まない国」と化している。超少子化の韓国の未来展望は、暗澹たるものだ。韓国統計庁の未来人口推計によると、23年11月現在、韓国の総人口は5177万人だが、2041年には4000万人台に落ち込み、2070年には3000万人台になる見通しだ。類例のない韓国の少子化がもたらす人口減少現象を、米国の『ニューヨーク・タイムズ』誌は、「14世紀のペストがヨーロッパにもたらした人口減少を凌駕する」と揶揄したほどである。
超少子化は生産年齢人口(15~64歳)の減少に直結し、韓国経済を脅かす。2050年の韓国の生産年齢人口は現在より33・2%減少し、2070年には53・2%も減少する。それによって、韓国経済人協会の展望によると、現在の年平均2%台の経済成長率は2061年からマイナスに突入する。