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 たとえば「認知症予防」を次の特集企画として検討中だとします。イメージとしては高年齢の方の関心を集めそうに思いますよね。ところがある年の調査では最も反応が良かったのは50代でした。恐らくご両親が認知症や要介護状態になるのを目の当たりにして、自分の将来についての不安を抱え始める世代なのではないかと思います。一方で70代、80代は、同世代の身近な方に症状が出始めることもあって、ある程度耐性ができてくる。知りたい情報も夫に症状が出たら何をすべきか、薬でどこまで抑えられるか、などに変わっていくようです。

 この調査はさらに細かく確認を行っていきます。仮に一番読みたい切り口に「〇〇を食べて脳の健康を保つ」が選ばれたとしても、どの言葉に反応したのかをしっかり見極めます。「〇〇」なのか「食べて」なのか。「脳」なのか「健康を保つ」なのか。本当のニーズがどこにあるかを把握するのです。さらに、その記事はお金を払ってでも読みたいかについても答えていただきます。本当に雑誌を手に取って下さるか、そこにはとても高い壁がありますから、その壁を超えるくらい切実なニーズかを徹底して調べるのです。

“プレシニア”は紙よりスマホで

 私が編集長を務めるこの7年間も、読者のライフスタイルは変化してきました。スマートフォンがその一つです。以前なら詐欺被害などを心配して、持っていてもあまり使わない方が大半でした。変化のきっかけはコロナ禍でしょうか。病院の予約などで使わざるを得ない場面が増えたのです。ただ、使い始めると様々な用途に使える。最近では推し活に使う方もいます。紅白で藤井風さんを見てファンになった方が家族に教わりユーチューブを見るようになり、いまではインスタをフォローしたりして楽しんでいるのです。人生の新しい楽しみをスマホで手に入れたわけです。

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 私たちは雑誌と連動してイベントも行ってきました。誌面にご登場いただいた方の講演会や読者同士で一緒に行ける旅行などです。以前はリアル開催のみでしたが、コロナ禍の苦肉の策としてオンラインでも開催したところ、遠隔地の読者の方も参加できると喜んでいただきました。意外にも新しい楽しみを提供することになったのです。