高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている和田秀樹さんの話題書『老いるが勝ち!』は、目からウロコのファクトが詰め込まれた、中高年必読の一冊です。

 今回は、本書の中身を少しおすそわけ。年末年始、自分のライフスタイルを見直すタイミングにぜひ知ってほしい「意外な事実」をいくつかご紹介します。

老いるが勝ち!』(文春新書)

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メタボリック・シンドロームは忘れるべき罪深い言葉

 まず、一つのデータを和田さんは示します。宮城県の郊外で行われた東北大学公衆衛生学グループの疫学調査研究による5万人規模の調査です。BMI(体重÷〈身長×身長〉。25以上は危険信号とされている)でいうと、40歳の平均余命は、

BMI 25~30未満(やや太め) 男性41.64年、女性48.05年
BMI 18.5未満(痩せ)    男性34.54年、女性41.79年

 痩せ型の人はやや太めの人よりも、男女ともに6~7年も早く亡くなっていることが明らかになったのです。 

 ずっと高齢者を診てきた和田さんは「私たちは、太っていると体に悪いという思い込みが強烈すぎて、なかなかそこから脱却できません。内臓脂肪はどうやら免疫細胞を作っているという説が強くなってきています」と触れたうえで、こう断言します。

 私は患者さんたちをちゃんと診ていれば、太めの人のほうが長生きしているのは容易に分かることだと思うのです。だから「痩せなさい」などと言っている医者は、患者さんをちゃんと診ていない人の典型なんじゃないかと思ってしまいます。

 実際、1999年以降、BMIが高い人の方が長生きするという「肥満パラドックス」を示す研究論文が山のように発表されています。たとえばお隣の国・韓国で130万人の住民を9年間にわたって調査した研究が2017年に発表されていて、そこでは「心不全だけではなく、急性肺炎、透析、肺気腫、心筋梗塞、ガン、脳血管障害、糖尿病などにおいて、痩せている人より太っている人のほうが長生きする」ことが示されています。

 まさにメタボリックシンドロームを真っ向から否定する結果がでてしまっているのです。