五味さんが毎分視聴率にこだわりだしたきっかけ
山田 1回目の時だったか、何かグラフを見せてもうたんですよね。で、「これ、見てみ」とある芸人さんが出た時のデータを見せられて、その人が出た瞬間、見事にギューンと視聴率が落ちている。それでこうなったらダメだって、気合入りましたね。
戸部田 五味さんってもともと広告業界の人で、あるとき、毎分視聴率を見て、自分がそれまで心血を注いでつくってきたCMのところで数字がガクッと落ちるということを目の当たりにしたそうなんです。当たり前といえば当たり前なんだけど、それを数字として見たときにものすごいショックを受けたという。それが逆に毎分視聴率にえげつないほどにこだわりだしたきっかけみたいですね。
山田 これは全部の手の内はおっしゃってくれないでしょうけど、これをやったら視聴率が下がる、これをやったら上がるという単純なものの先のこともわかってはるんでしょ、五味さんは。
戸部田 そうだと思います。やっぱりただ単純に下がったからダメというわけではないらしいですね。データを重視しても、最終的には「感性」だっておっしゃっていました。たとえば『エンタ』では、最初、アンタッチャブルさんは数字が下がっていたらしいんですよ。でも、五味さんは、これは何かあるという感性が働いて起用し続けたら、やっぱりちゃんと上がった。
山田 へえ、すごいなあ。だから五味さんにしても、土屋さんにしても、俺らはもう畏怖の対象やから、その人たちと今回の取材で立派にスキマさんが渡り合ってきたんやという感動がありましたよ、俺は(笑)。
※後編〈髭男爵・山田ルイ53世の告白「『あっ、ルネッサンスや!』と言われると傷つきます」〉は6月2日公開です。
写真=鈴木七絵/文藝春秋
髭男爵 山田ルイ53 世
本名・山田順三。お笑いコンビ・髭男爵のツッコミ担当。兵庫県出身。地元の名門・六甲学院中学に進学するも、引きこもりになり中途退学。大検合格を経て、愛媛大学法文学部に入学も、その後中退し上京、芸人の道へ。著書に「ヒキコモリ漂流記」(マガジンハウス)。今回単行本になった「一発屋芸人列伝」(「新潮45」連載)は雑誌ジャーナリズム賞「作品賞」を受賞している。
戸部田誠
1978年生まれ。2015年にいわき市から上京。ライター。ペンネームは「てれびのスキマ」。お笑い、格闘技、ドラマなどを愛する、テレビっ子ライター。『週刊文春』『週刊SPA!』『水道橋博士のメルマ旬報』などで連載中。新刊は日テレがいかに絶対王者フジテレビを逆転できたのかを描いた『全部やれ。』、主な著書に『笑福亭鶴瓶論』、『1989年のテレビっ子』など。