みんな、次の一手を探っている
戸部田 HGさんは「一発屋会の添え木」とか、中でも、コウメ太夫さんの芸風を「ひらがな感」と表現されているのは、本当に秀逸でした。
山田 一番「ひらがな感」が響きました?(笑) スキマさんに響くとうれしいのは何なんでしょうかね、これね(笑)。一発屋芸人としては、『全部やれ。』の中のある一文が響きましたね。
戸部田 どこですか?
山田 「逆襲は敗者だけに許された特権だ」。あの行のあとにこの本を入れたいぐらいですから(笑)。ちょっと分厚くなりますけど。でも、そうだよなあって思うし、たぶんみんな、多かれ少なかれ、そういう気持ちをもってやってるし。やってるからこそ、世間的にはそないかもしれませんけど、今また、みんな何かしら芽が出始めてる。
戸部田 そうですね。だから、一括りにされがちな一発屋芸人ですけど、この本で全部事情が違うんだということもわかったし、当たり前ですけど、みんな次の一手を探っているっていうのが見事に描写されてますね。
山田 でも、そういう意味でも、そこは『全部やれ。』も一緒ですよね。だって、“スタッフ”と言われる人たちに、こんなにドラマがあるかっていう。五味さんが中途入社で、CM業界から入ってきたみたいな話も、もちろん知らなかったから、すごい面白かったですし。男たちの熱くたぎる感じ。ドラマ化してほしいですよ。シーンとシーンの間に、オレンジの太陽、見えましたもん。ゴゴーッていう(笑)。
戸部田 あははは。僕は、『一発屋芸人列伝』もドラマ化したら面白いと思うんですよね。市井(昌秀)監督に撮ってほしい(笑)。
山田 元髭男爵のね。あいつも今、頑張ってますからね。それにしても、お互い、いい本を書きましたねぇ(笑)。
写真=鈴木七絵/文藝春秋
髭男爵 山田ルイ53 世
本名・山田順三。お笑いコンビ・髭男爵のツッコミ担当。兵庫県出身。地元の名門・六甲学院中学に進学するも、引きこもりになり中途退学。大検合格を経て、愛媛大学法文学部に入学も、その後中退し上京、芸人の道へ。著書に「ヒキコモリ漂流記」(マガジンハウス)。今回単行本になった「一発屋芸人列伝」(「新潮45」連載)は雑誌ジャーナリズム賞「作品賞」を受賞している。
戸部田誠
1978年生まれ。2015年にいわき市から上京。ライター。ペンネームは「てれびのスキマ」。お笑い、格闘技、ドラマなどを愛する、テレビっ子ライター。『週刊文春』『週刊SPA!』『水道橋博士のメルマ旬報』などで連載中。新刊は日テレがいかに絶対王者フジテレビを逆転できたのかを描いた『全部やれ。』、主な著書に『笑福亭鶴瓶論』、『1989年のテレビっ子』など。