金を工面するため絵画の転売について意見を交わした
X氏が言葉を継ぐ。
「健康上に問題があると言いながらコカインを事前に270パケも購入していた。年が明け、今年に入ってからも大量の配達を依頼されました。MDMAは通常、カップルが性的興奮を高めるために利用するものだけど、カウフマン氏はシャブ入りの錠剤を好み、カンフル剤のように使っていた。〈MDが私を助けてくれる。俺は寝たくないんだ〉と。錠剤を身体に入れた後は〈MD good!〉と感想を漏らしていた」
だが、今年4月、カウフマン氏に異変が起こる。
「いよいよ『心電図に問題がある。ストップだ』と、コカインの配達を止めたいと言ってきた」(X氏)
通い詰めた青山霊園内のベンチ。X氏が社長在任期間中のデポジットを求めると、カウフマン氏は次のような話をしたという。
「私の手元には金がない。あなたが絵画を買い付けに行き、それをオリンパスが高値で買い取るというのは良い考えだ」
今年5月頃、X氏はアンディー・ウォーホルの作品を所有する知人に依頼し、カウフマン氏を通してオリンパスに高値で転売するスキームについて話し合った。そして、6月17日。2人はふたたび絵画の転売について意見を交わした。
だが、事件は、何の前触れもなく起きた――。
カウフマン氏の自宅にガサ入れ
翌日午後3時、約20人の捜査員がX氏のアジトがある港区のマンションに突入。覚醒剤が見つかり、X氏は覚醒剤取締法違反容疑で逮捕された。
時を同じくして、カウフマン氏の自宅にも家宅捜索が入った。だが、薬物使用を控えていたカウフマン氏の自宅から違法薬物は見つからなかった。
「俺はカウフマン氏への売買は一切謳わず、覚醒剤の単純所持と使用などの容疑で起訴されて、後に執行猶予判決を受けた。俺だけが罪をかぶった形だ」(X氏)
オリンパスに一連の経緯について尋ねたが、「捜査中」を理由に回答しなかった。またカウフマン氏の携帯電話に事実確認を求めるメッセージを送ったが、こちらも期日までに返事はなかった。
最後にX氏がカウフマン氏に接触したのは、9月16日のことだ。
午後3時過ぎ、近況を報告する手紙を投函するため、カウフマン氏の自宅に向かったところ、偶然本人と遭遇。そこでX氏は逮捕の経緯を報告した。
すると、カウフマン氏は落ち着きなく周囲を見渡し、「It's over!」と叫ぶと、右手でX氏の左肩を殴打。そのまま自宅方向に逃げていったという。
警視庁は、現在もカウフマン氏の捜査を続けている。
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