社長就任を目前に控えて結んだ“悪魔の契約”
契約書には、1カ月でコカイン18パケ、取引価格60万円をレギュラーペイメントとし、年間3回のボーナスには月240万円を支払うという記載がある。こうしてカウフマン氏は社長就任を目前に控え、“悪魔の契約”を結んだのだ。
「昨年3月は仕事が多忙を極め、それに伴ってコカインの発注量も増加。契約上の18パケでは収まらず、月30パケ以上も配達することがあった」(同前)
昨年3月2日午後。カウフマン氏はX氏を新宿区の京王プラザホテルに呼び出した。
「このホテルにはオリンパスの関係者がたくさんいるから話しかけないでくれ」
事前にそう釘を刺されたX氏は、館内でスーツ姿のカウフマン氏と落ち合うと、アイコンタクトで南館1階のトイレに誘導した。
X氏がコカインの入った茶封筒を手渡すと、カウフマン氏は代わりに計50万円が入った茶封筒を差し出してきたという。
「その日の夜には(合成麻薬の)LSDを自宅近くに配達した。その頃のカウフマン氏はもはや歯止めが利かなくなって、港区北青山の高級ステーキ店に俺を呼びつけたかと思えば、コカインに混入した不純物を指摘して『前回のモノと違う。質が低下している』と文句をつけてくることもあった」(X氏)
次第に2人は奇妙な信頼関係を築いていった
2人の関係は緊迫感を漂わせながらも、次第に強固に結ばれていく。
小誌記者の手元には、2人の会話を記録した3本の音声データがある。例えば、昨年3月27日分には、カウフマン氏の次のような発言が残されていた。
「もし我々の(違法薬物に関する)話がバレれば、株価は1000(円)まで下がるよ」(和訳、以下同)
この日、東証プライム上場のオリンパスの株価は2255円。それが半減すると言っているのだ。
「僕はドイツで税金を払っているから、日本の給料はそんなに高くない。給料もドイツにあるから日本ではお金がないんだ。理解してほしい。ドイツから日本へお金を移すことはできないから、お金が増えるのは株を売ることができる来年になるんだ」
昨年4月1日、カウフマン氏が社長に就任すると、すかさずX氏は〈Congratulations〉というメッセージを送信。新社長は〈thank you〉と短く返信した。小誌が入手したテレグラムのカウフマン氏の文面は、ビジネスパートナーに宛てたもののようだ。
〈I believe we have already an agreement for our long term business relationship which works well for both of us.(我々はすでに長期的なビジネス関係にあると思う)〉
〈I will bring you tonight the money for the next delivery…(今晩、次の配達に向けたお金を持ってきます)〉
社長に就任後、カウフマン氏は周囲を警戒し、取引場所に気を遣うようになったという。頻繁に選んだのは、深夜の青山霊園内にあるベンチ。遠方でライトが灯ると、2人は墓石の裏に身を潜めた。取引は毎週3、4回。次第に2人は奇妙な信頼関係を築いていく。