「かつては、中国の大学で日本語を学んでから、来日するケースが多かった。しかし、日本語を学んでいなくても、とりあえずは日本に渡って日本語を勉強して、大学を受験するという人が増えているようです。日本企業も、日本の大学を卒業した中国人人材を求めていますので、東大卒であれば引く手あまたです。さらに、この数年は日本で暮らす中国人の子弟が、名門中学や高校を受験して、東大生を目指す“受験の低年齢化”も起きています」
不動産売買では「東大の近く」「文京区」など細かい希望が
その低年齢化を肌で感じているのは、都内で中国人向けに不動産売買を仲介する会社Worth Landの杉原尋海氏だ。
「毎月約30件の問い合わせがあるうち9割ぐらいが中国本土の方です。日本で中学受験をするため、移住したいと話す方が急増しています。『子供の将来のために東大の近くのマンションを買いたい』とか『文京区に住みたい』と、細かく希望をおっしゃる。中国では、日本の中学や高校のお薦めランキングなどが、共有されているようです」
杉原氏によると、都内で中国人から人気が高い地区は、港区、中央区、千代田区、新宿区、文京区などだ。
「『欧米の物件も検討したが、治安もよく教育環境もよい日本を選んだ』という人が多い印象です」(同前)
中国人の子供向け学習塾も首都圏で増加中
その傾向を表すように、首都圏では中国人の子供向けの学習塾が、増加している。その一つを運営する胡さん(仮名)に話を聞いた。
「私の把握している限りでは今年だけで開成、桜蔭、豊島岡女子学園にそれぞれ20人ほどの中国人の子供が入学しました。筑波大附属駒場には4人ほど入っていますが、実際はもっと多いでしょう。日本に住む中国人同士は、SNSの『WeChat』で教育事情について情報共有しています。私が知っている、ある中学受験のグループは500人以上の参加者がいて、良い塾の情報を交換しています」
大手中学受験塾の関係者も、こう話す。
「入塾条件に国籍の入力を求めていないので、正確な数字は把握していません。ただ、都内で言えば湾岸エリアや東京の北側から埼玉の南側にかけてのエリアの校舎では、中国系の入塾が増えているのは事実です。中国系の子供は、先取り学習をしているため、みんな理科や算数は良くできる。ただ、国語や日本史が弱い子も多くて、そこで差がついています」
都内の名門中学や高校に質問状を送ったところ、「取材には応じられない」という回答ばかりだったが、渋谷教育学園渋谷中学校からは、次のような旨の答えがあった。
「入学している生徒の中には、中国に限らず外国にルーツを持つ生徒が複数名おり、その数は以前と比べて増えていると感じます。それらの生徒は日本人と同様、本校の教育理念に共感して入学されています。また本校の生徒の多くが難関大学に進学しています」
中国人の親の教育熱は日本人の親の比ではない
我が子の将来を想い、早くから教育に力を入れている。その姿は子供に中学受験をさせる日本人の親と変わらないように思える。しかし決定的に違うことが一つある。中国人ジャーナリストの周来友氏はこう語る。