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国際化の流れは否定しないが、バランスが重要

 留学生全体の数が増加していることは、国際化していることの証しで、歓迎されるべき点もある。一方で、特定の国の学生が増え続けることに、問題はないのか。この現状に警鐘を鳴らすのが、東京大学名誉教授の山内昌之氏である。

「東京大学は国の最先端の研究機関であり、国の安全保障に関わる研究もおこなわれています。日本を取り巻く安全保障の問題から考えると、中国人が東大を席巻し、ここまで増えているというのはリスクを懸念せざるを得ません」

山内名誉教授

 山内氏は、国際化の流れは否定しないが、バランスが重要だと提言する。

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「私が在職中の10年ほど前から、理系の大学院で中国人の姿を多く見るようになりました。もちろん、『日本で学びたい』という人たちの自由は尊重すべきだと思います。一方で東大には国から多額のお金が入っていることを忘れてはいけません。たとえば、今年度は約800億円が投入されている。これは国民の税金が原資です。あえて厳しい言葉を使うなら、日本人のリソースを特定の国の学生に“奪われている”といっても過言ではないでしょう。中国という国が軍事大国であり、日本の脅威となっていることを踏まえると、制限なく受け入れ続けるのは国民にとって危ないことと言えます」

 日本人が知らない中国人東大生の急増。その背景には何があるのか。

習体制で激変

中国人が東大を目指す、3つの国内事情

 北海道大学教授で、現代中国研究が専門の城山英巳氏は、「中国人のブランド志向が、日本のトップである東大を目指す理由だ」としつつ、3つの国内事情が背景にあると分析する。

「まず、中国では一流大学を卒業しても就職できない若者が国内に溢れかえっています。2つ目に習近平体制で強化された言論統制の影響です。自由に自分の好きな学問をすることが困難になっていることもある」

 さらに、2020年から始まったゼロコロナ政策が決定的だった。

「他国がアフターコロナに移る中でも、市民の行動に強い制限をかけ、外出禁止などの負担を強いた。学生を中心に白い紙を掲げて政府に抗議する『白紙運動』も行われましたが、それすら政府によって弾圧されました。それまで中国なりの自由を謳歌してきた若者から、『中国が嫌になった』と聞くようになりました」(同前)

中学受験のため日本に移住する

 では、実際に東大で学ぶ中国人はどのように考えているのだろうか。2年前に来日した東大生の李さん(仮名)に聞いた。

「両親は共産党員なのですが、私はその共産党の教育方針に子供のころから違和感を持っていました。習うのは『共産党が政権を取ったことで豊かになった』とか『人民解放軍は強い』とか、そういうことばかり。高校生の時に世界史の授業で、初めてイギリスや日本には『議会』があり、みんなで決めることができると知りました。中国人は共産党の作った嘘の中で、生活していると思います」

 

 李さんは、来日後に日本語学校に通って日本語を習得。東大を受験して合格した。城山氏は、近年の東大などへ入学する若者の傾向についてこう解説する。