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「大統領を5分で電話に呼び出す」食品会社CEO 

 食品業界もダイエット業界も、太り過ぎは消費者の責任だと言う。だが、ダイエットは必ず太りやすい体質を作り、ヘルシーな食品にはタバコやアルコール並みの中毒性があることが証明されている。しかも、タバコやアルコールとちがって、このふたつの業界は何の規制も受けていない。ダイエットの広告はそこかしこにあり、糖分たっぷりの食品がスーパーの棚を埋め尽くしている。わたしたちは太り過ぎを避けられない環境に置かれているのだ。

 現在の食品産業はかつてのタバコ産業と重なる部分が大きい。かつて肺がんと喫煙との関係が指摘されたとき、タバコ会社は科学を歪め、タバコと肺がんの関係を頑なに否定していた。だが政府の規制とグローバルな禁煙の流れによって、先進国ではタバコ産業が「敗北」したと言っていいだろう。一方、食品産業はタバコ産業よりはるかに強力で巧妙だ。大手食品会社のCEOなら、「大統領を5分で電話口に呼び出せる」と言われるほどに。

世界は偶然の産物なんかじゃない

©榎本麻美/文藝春秋

 食品業界は今のところ、かつてのタバコ産業と同じ戦略をとっている。科学を否定し、批判者の信用を貶め、協力的な研究者には資金を提供し、政治家と深い結びつきを築いている。

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『世界を変えた14の密約』は、今わたしたちが見ている世界が偶然の産物ではなく、企業の損得勘定に基づいて出来上がってきたことを教えてくれる。企業は問題を作り出し、その解決策を売ることで富を創造してきた。「太り過ぎ」もまた、企業によって作り出され、そこから莫大な利益が生まれている。本書を読めば、スーパーの棚に並ぶ糖分たっぷりの低脂肪食品にはもう手が出なくなるかもしれない。

関美和(せき・みわ)
慶應義塾大学文学部卒。電通、スミス・バーニー勤務を経て、ハーバード・ビジネス・スクールでMBA取得。モルガン・スタンレー投資銀行を経て、クレイ・フィンレイ投資顧問東京支店長を務める。杏林大学外国語学部准教授。主な翻訳書に『シェア』『MAKERS』『ゼロ・トゥ・ワン』『Airbnb Story』『レッドチーム思考』などがある。

世界を変えた14の密約

ジャック・ペレッティ(著),関 美和(翻訳)

文藝春秋
2018年5月30日 発売

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