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着用率2位をキープしたアシックスの変化

 昨年と変わらず2位だったのがアシックス。昨年の着用率24.8%からほぼ変わらず、25.7%を維持しています。

 先日、とあるアシックス関係者から、2021年に文春オンラインで書いた記事「《シューズで見る箱根駅伝》ナイキ一強はどこまで続く? そしてついにアシックスが箱根路から消えた!」が朝礼で話題となったと言われました。

 思い返せばあのときからアシックスは変わりました。トップ選手の意見を取り入れた新しいシューズを作るというプロジェクトが始まり、メタスピードを開発。さらに熟成に熟成を重ね、2024年10月には シカゴマラソンで、メタスピード(プロトタイプ)を着用したケニアのジョン・コリルが、世界歴代6位の2時間2分44秒で優勝。シックスメジャー大会のひとつである高速レース、シカゴを制したのです。

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着用率2位をキープしたアシックス。写真は人気のメタスピードエッジ

 さて、ご存知の方も多いと思いますが、メタスピードにはストライド走法向きのスカイと、ピッチ走法向きのエッジがあります。発売当初は、ナイキのヴェイパーフライに近いスカイが圧倒的人気でしたが、現在ではエッジが逆転。アディダスのエヴォ1と同じく足の回転数が上がるケイデンスシューズの着用率が上がっているのです。

 ちなみに今大会では8人の選手がアシックスのプロトタイプを履いています。このシューズ、見た目はシンプルなメタスピードなのですが、実際に手にしてみると、驚くほどに軽い。そして、クッションは「ほぼエヴォ1」と思わせるようなフワフワな触り心地。とある箱根ランナーが試しにトラックで履いてみたところ、スピードが出すぎてトラックが曲がれない(笑)。それほどまでにスピードが出るシューズなのだそうです。

 ナイキはソールで数多くの特許をとっているため、他メーカーはそれを侵害しないアプローチを模索し続けてきました。その中でアディダスとアシックスは、ナイキと違う方向性で攻め、同じ答えに辿り着き、同じ方向性のシューズを作ったということだと思います。

巻き返しを図るナイキの原点回帰

 さて、一気に第3党に転落したナイキの逆襲はあるのか。

 ナイキの敗因のひとつは、イノベーションを起こし続けなくてはいけない社内文化にあると思っています。ヴェイパーフライもアルファフライも、新モデルがドラスティックに変わりすぎて、選手が求めるものとのミスマッチが生まれてきたと感じます。

今年のニューイヤー駅伝でお披露目されたナイキの新型ヴェイパーフライ

 その象徴的な出来事がパリオリンピックでありました。

 もともとヴェイパーフライは、マラソン元世界記録保持者のエリウド・キプチョゲのマラソン2時間切りを目指して開発されたシューズです。しかし、彼のために開発されたシューズでありながら、パリオリンピックでキプチョゲは、最新モデルのヴェイパーフライ3ではなく、1つ前の2を最新モデル風にデザインしたシューズで走りました。要は「ヴェイパーフライ2で良かったじゃん」という話です。

 そこでナイキは、今年のニューイヤー駅伝で新たなモデル(記事末のシューズ着用表では「ヴェイパーフライ4(仮)」と表記)をお披露目しました。トップオブトップの選手だけが履いたこのモデルをじっくり観察してみるとデザインも大ヒットモデル、ヴェイパーフライ2を踏襲したものであることがわかります。

 つまりナイキは原点回帰をしたのでしょう。着用選手の結果も悪くありませんでしたから、このシューズで巻き返しを図るのだと思います。