着用率を上げたプーマ、駒澤大・佐藤圭汰選手が履いたOn
第4党は前回大会と同じプーマですが、着用率は8.7%から11.9%にアップ。着用選手のうち城西大の桜井優我選手が9区で区間賞を獲得、3人が区間3位以内に入っています。
プーマのシューズはソールが前後で分割されていたり、つま先が前に出ていたりと、ちょっと奇抜なデザインなのですが、それも速さにこだわっているゆえのデザインなのです。城西大や立教大といったユニフォーム契約をしている大学の選手をアメリカに呼び、採寸も行ない、日本人ランナーの傾向を本社で吸い上げていくという力の入れようでした。こうした努力が、着用率の拡大につながったのだと思っています。
そして第5党に上がってきたのがOnです。着用者数は前回と変わらず全体で3人ですが、7区で区間新記録を出した駒澤大の佐藤圭汰選手が履いたという実績は大きいでしょう。佐藤選手はOnのトップアスリートチームOACの合宿に参加するなど、シューズだけでなく、世界を見据えた練習のサポートも受けていますし、全日本大学駅伝前には開発責任者が故障から練習を再開したばかりの彼や、篠原倖太朗選手の走りをチェックしにわざわざ来日をしていたほどです。
創価大の吉田凌選手が履いていたのが、パリオリンピックでOnがローンチした紐なしシューズ「クラウドブーム ストライクLS」。これはハロウィンなどの飾り付けで使われる蜘蛛の糸風のスプレーから着想を得て開発されたシューズ。縫って貼ってという既存のシューズ制作とは異なり、ソールを装着した足形に糸を吹きつけて成形するというもの。僕も試し履きをさせてもらったのですが、新感覚の履き心地で、しかもこのシューズを履いた選手がオリンピックで躍進し、一気に注目度が高まりました。今後、駅伝界にどのように浸透していくのか楽しみです。
人気コンテンツになってきた日本の駅伝
さて、なぜグローバルのメーカーがここまで日本の駅伝に力を入れるのかというと、アジアで日本の駅伝が人気コンテンツになっているからです。特にタイ、中国、韓国、台湾の駅伝好きは、日本の情報をくまなくチェックしているし、熱狂的な駅伝ファンも多いのです。
だからこそ各メーカーは新作のお披露目の場に駅伝を選んでいます。ニューイヤー駅伝でローンチされたナイキの最新モデルもグローバル初登場でしたし、日本の駅伝が各スポーツメーカーのプレゼンテーションの場になる機会は、ますます増えていくでしょう。
1年でシェアがここまで激変するランニングシューズの世界。来年はどんな変化が起きるのか。群雄割拠のシューズ戦線は、ここからさらに面白くなるはずです。
構成/林田順子(モオ)