仏教用語の「壇」と「蜜」を足して、芸名に
――芸名の「壇蜜」も斬新な名前ですが、これは壇さんが考えたのでしょうか。
壇 そうです。渋谷の「ラケル」(※)で自然と決まりました。
※編注:オムレツが有名な洋食チェーン店
――ラケルで自然と「壇蜜」という2文字が浮かんできた?
壇 当時、仏教の勉強をしていたのと、遺体衛生保全士をしていたこともあり、今まで学んできたことを忘れたくない気持ちがありました。加えて、そういった世界観は自分にしか作れないものではないかと考え、仏教用語の「壇」と「蜜」を足して、芸名としたんです。
――デビュー時、「壇蜜」という名前にどんな反応がありましたか。
壇 オーディションで、鼻で笑われたこともありますよ。「何この名前?」「何人?」とか。まず、「人」かどうかでざわついた、という話も聞いたことがあります。
結婚して「清野支靜加」になって
――「齋藤支靜加」、「壇蜜」、そして2019年に漫画家の清野とおるさんと結婚され、「清野支靜加」になりました。「清野(せいの)」という名字も珍しいですよね。
壇 そうですね。読み方としては、「きよの」さんの方が多いというのは夫から聞いてます。
私は「清い野はらのしずか」ですから、ずいぶんスピリチュアルな名前に変貌したなと。
――こちらもきれいな名前ですよね。
壇 それに恥じないように生活しなきゃって、ちょっとプレッシャーでもありますね。ちなみに夫は「清野通」なので、清い野原を通っちゃうんです。
――プレッシャーということですが、清野姓に変わることに迷いもあった?
壇 私自身でいえば、夫の姓に合わせることにそこまで抵抗はなかったですが、選択的夫婦別姓制度を求める方々が今の日本にはたくさんいて、切実なお気持ちを抱えていることも知っています。
――選択的夫婦別姓制度ができたとしても、壇さんは清野姓を選びますか。
壇 夫が借金地獄でギャンブル依存症でアル中になっちゃった、とかじゃない限りは、私は清野でいいかなと思っています。
齋藤姓に未練はないですが、ずっと気になっていたのが、自分の齋藤の「齋」の中に、なぜ「Y」が入っているのかということでして。
――確かに、なべぶたの下に小さな「Y」がいますね。
壇 サイトウ界隈では、「Y族」と呼ばれていました。「下が横棒2本のY族?(=齊)」「“示す”の方のY族です(=齋)」というやりとりが定番になっていましたので、そこに加わることができないのは名残惜しいですね。
ただ、学校でも同じ学年に6人のサイトウさんがいたので、“サイトウ大渋滞”といった場面が多々ありましたが、「清野さん」はたいてい私一人なので、そういった点では認識がしやすくなりました。
――自分が子どもを持つならどんな名前にしたいかといった、名付けについて考えたことはありますか。
壇 実は清野さんとも話していて、この今の世の中で私たちが子どもをもうけて育てるというのはできないね、という結論に達しています。ですので、ペットに名前を付けるのは楽しみだったりします。
――「今の世の中」というのは具体的にはどういうことでしょうか。
壇 私たちが子どもを生む年齢からは若干、年が過ぎてしまったというのがひとつ。あと、生み育てるための体力への自信のなさもひとつです。
しかし、正直に言えば、子どもを成人まで育て上げて、家族一緒にかけがえのない思い出を作るというストーリーよりも、私と清野さんの2人で作り上げていく何かのほうが魅力的だった、というのが正直なところです。
写真=鈴木七絵/文藝春秋
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