「Y(量販店)のレジで支払いをしているところの写真で、後ろには雑貨が置かれていました。その男はレンズを見上げていて、口を開け、左目をしかめたような表情だった。身長は165cmくらいで、体型はやせ型。ストレートの髪を額に垂らしていて、白地にちょっと柄の入った丸首Tシャツを着とったかな。見たところ年齢は17~18歳の、その辺を歩きよるガキって感じですよ。画面にあった日付は6月18日で、たしか昼の12時1分42秒って表示がありました」
日本語学校の『K』に在籍していた男
そうしたなか、「日本語学校の『K』に在籍していた男とそっくりだ」との声が寄せられる。男は中国人でその名は王亮(ワン・リャン)という。捜査員が調べたところ、福岡市東区のアパートで楊寧(ヤン・ニン)という男と一緒に住んでいることがわかったが、2人は事件から4日後の6月24日に、福岡空港から中国に向けて出国していた。
令状を取った捜査本部が7月30日と31日に、王たちの住むアパートを家宅捜索したところ、室内に残されていた毛髪などの押収品と、A家のベンツ車内から検出された血痕のDNA型が一致したことなどから、両名がこの事件に関与している疑いが濃厚になる。
王は中国・吉林省出身の21歳。前年である02年4月に就学ビザで来日すると、福岡市内にある日本語学校『K』に入り、寮生活を送っていた。彼が選択したのは『大学進学準備2年コース』という、日本の大学に進学するためのコース。当初は真面目に学校に通っていたが、同年11月に寮を出てアパート暮らしを始めてからは、次第に授業を休みがちになり、03年4月からはまったく出席しなくなる。そのため、事件の約1カ月前の5月15日付で同校を除籍となり、事件4日後の6月24日に、福岡空港から中国・上海行きの飛行機で出国していた。
上海行きの便で帰国した王亮
犯行10日前の6月10日、王の通っていた『K』は、彼の除籍処分の張り紙を出している。それを見て学校にやって来た王は「もう少し勉強をしたいので、残れませんか」と話していたという。だが、その願いは叶えられず、学校側は除籍にした彼に対して、速やかに帰国するよう指導。
そこで王は、同校の職員によれば「6月15日くらいに」、帰国のための航空券を持参して学校を訪ねている。通常であれば吉林省に実家のある王が帰国する場合、瀋陽か大連行きの飛行機を選択するのだが、彼は上海行きの便にしていた。職員がその理由を尋ねたところ、「安い航空券が手に入りましたから」と答えていた。彼が楊らと事件を起こしたのは、それから1週間も経たない20日未明のことだ。
なお、6月24日の王の出国に際しては、福岡空港まで『K』の副校長が送っていた。同校職員は言う。
「たしか午後2時か3時発の上海行きCA(エア・チャイナ)でした。かなりの量の荷物を持っていて、いかにも帰国するという様子だったそうです。また、その際に誰かと一緒に帰るといったような、第三者がいる感じではなかったとのことです」
だが共犯者である楊も、同じ便で中国へ向け出国していた。