時には年間で1億円のスーパーチャットが飛び交う景気のいい世界でありながら、突然の活動休止も続くVTuberの世界。

 大手事務所のVtuberの“中の人”として活動していた時期を経て、現在は個人で活動するksonさんは、事務所からの退所を決めたきっかけ、「今楽しくないかも」と気づいてしまった瞬間、そして長く活動を続けるたった1つの大事なポイントについてお話を伺った。

ksonさん ©文藝春秋 撮影・三宅史郎

「当時は大きな事務所が2つくらいしかなくて、両方に…」

――事務所で活動することになったきっかけはオーディションですか?

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kson オ-ディションですね。当時は大きな事務所が2つくらいしかなくて、両方に10分ぐらいの動画を作って送ったら、片方の事務所から次の日にすぐ連絡が来ました。もう1つの事務所からも1週間後ぐらいに「お話を聞きたいです」と連絡いただいたんですけど、その頃にはもう全部決まっちゃっていたのでお断りしました。想像つきませんけど、別の世界線があったかも知れないですね。

――2020年くらいのVTuber事務所って内部はどんな感じだったんでしょう。

kson 自由……というか何でもアリでした。今は本当に厳しそうですよね!

――放置状態?

kson 言われた3Dモデルのアプリをダウンロードして「あとはご自由に」っていう。実は私はある別のキャラクターをもらう予定だったんですけれど、色々あってオリジナルモデルを作ることになってデビューが半年くらい後ろ倒しになったんですよ。だから同期もいなくなっちゃいました。

 

――そんなところにも別の世界線が。

kson でも結果的にオリジナルだったのでちょっと希望に沿って作ってもらえたのはラッキーでした。体感ですけど、すでにモデルがあって自分が「中の人」に選ばれて活動するのと、自分の性格とか喋り方が合いそうなモデルを作って活動するのは負担が結構ちがう気はしますね。特に私は別の人格を演じるのが下手だから、ストレスになってたと思います。

――大きな事務所であるほど、なかなか自分では選べませんよね。

kson 与えられたモデルに近いキャラクターを細かく作り上げて演じているうちに苦しくなっちゃう人もいるみたいです。私はモデルも活動も自由にさせてもらって楽しくできたけど、自分そのままで活動することで逆に辛くなっちゃう人もいるし、難しいですね。