プリンス小林とジャイアント白田。全くタイプの違う才能がぶつかり合い、2001年のフードファイトブームは生まれた。『TVチャンピオン』と『フードバトルクラブ』。二大大食い番組の鍔迫(つばぜ)り合いに翻弄されながら、新たなフードファイター時代の到来を夢見ていた大食いの若者たち。

 そして彼らの中でただ一人、その後20年以上フードファイターであり続けた小林尊(46)。当時を振り返った小林が今テレビに対して思うこと、SNS時代にフードファイターたちはどう「食べる」べきか。大食いがスポーツであるために、引退後の小林が目指す未来とは。(全3回の3回目/初めから読む)

小林尊さん ©三宅史郎/文藝春秋

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大食い番組ブーム終焉後のファイターたち

――2002年に大食い番組が相次いで終了したあと、選手たちはどうされたのでしょうか。 

小林尊さん(以下、小林) みんなしばらくはまた復活するだろうと思っていたと思います。でも時間が経てば経つほどやっぱり現実に戻らないといけないので、当時大学生だった僕も含めて学生が多かったですし。どんどんその世界から離れていっちゃいましたね。

 ただ、2005年に『TVチャンピオン』(テレビ東京系)の全国大食い選手権を継承した『元祖!大食い王決定戦』がはじまって、そのときに白田(信幸)は復活しました。でもちょっともうピークを過ぎていたというか、気持ちのほうが難しかったんじゃないかなと。

――気持ちですか。

小林 僕はコロナの時期5年ほど試合しなかったんですけど、体以上にきつかったのは、試合勘やモチベーションを立て直すことでした。「もういいだろう、もう十分やっただろう」って自分のなかで決めちゃうと、いざ戻ろうとしても戻れない。

 白田も最初の復活戦で負けてましたけど、大変だったろうなって思いますよね。だって当時相談されましたもん。「尊、今度また番組呼ばれて出なきゃいけないんだけど、休んだあとってどれくらいで準備できると思う?」って。それで僕は「2、3ヶ月ありゃ十分だろ」って言ったんですよね。

 

 僕はそうなんですよ。だいたい半年間試合出て半年間休むんですけど、体つくるのにだいたい2、3ヶ月。まず1ヶ月で胃の容量を一気に増やしちゃえば最大容量まで持っていけるので。でも白田はそのとおりにして負けたっていう。それですごい怒られました。「全然時間足りねえじゃねえか!」って(笑)。